第8章 スキルアップ
この、呪霊が術式を掛けた際の被害者の体に残った呪力。
これがいちいちピリッとした感覚で疲労度を加速させている。流れ作業とかでいちいちビリビリペンを使わないといけないとか、そんな状況みたいな。
治療を終えた両手を見れば小刻みに震えている。疲労がピークを迎えてもまだまだやって来る人間を止める事なく治療をする…無茶をしているから。
変にストレスと、術式を通しての治療、そして引き寄せる為に対象者がやって来るという悪循環。ここに来ている5人の誰もが休むこと無く慌ただしく動く。
いくら式髪が残っていても限界は限界。その天井が見えてきていた。
「みたらい、次を連れてきた」
伏黒が玉犬と共にふたり引き摺ってくる。治し終えた男女、女は気絶しているけれど、男はきょろきょろと周囲を見て怯えていた。
「あっ…あわっ…あわわわわっ!」
『あ、この人叫ぶタイプだ』
両手で掴んでゴチン、と頭突きし、一度で黙らなかったのでもう一度頭突く。この手の正気に戻ったら騒ぐタイプは時折釘崎のパンチや虎杖の頭突き、伏黒の手刀で気絶させていたけれど。
疲れた私の二度の頭突きで泡を吹く彼に触れ、余計な怪我を吸い取った所で伏黒はため息を吐いた。
「虎杖、釘崎。お前らで原因となってる呪霊祓ってこい。みたらいの方が限界そうだしな。
最初に比べれば数も減ってきたし俺は式神があるから手数はなんとかなる。帰り用に玉犬付けてやるから」
砕石を踏みしめるバスのタイヤの音。
送り出してきたんだろう、伊地知は誘導して次に発車させるバスと入れ違いに空き地に駐車させる。
だいぶ2台目のバスも人が乗ってる。皆難民みたいに布を巻いてさー…と、伏黒が地面に押し付けているンーンーと騒いでる全裸の人ふたりに触れた。
羽交い締めに捕らえてる釘崎と虎杖は顔を合わせ、出現率が少し落ち着いてきてる精神汚染された人を連れてきて、地面に叩きつける。多分痛みでだろうけれど、ンー!と両者唸っている…。
暴力だけれど、言葉で大人しくしてくれないからこればかりは仕方ない、治療しとくから出来るだけ大人しくして欲しい。