第5章 "好き"が止まらない!
「恋人だから良いだろ?僕だって寮までのデートを楽しみたいんだぜ…?」
この人はいちいち良い声で耳に囁くから心臓に悪い。
本当に恋人になった今じゃ(恋人、だなんて夢みたいでまだ信じられないけれど)これに慣れる未来があるのとか見えない。
どきどきしながら、それを隠したくて別の話題を必死に探す。
……ああ、そうだ。
『あっ!寮に戻る前に駅近くのコンビニ寄るから、私』
「なになに?コンビニスイーツでも買っちゃう?」
『覚めてきたので燃料を少々』
家にすごいもだけはあった。冷蔵庫にも一本あったかな?あれはノンアルだった気が。
もう少し飲めたけれど帰ってしまったのでこの物足りなさを解消したくて私はコンビニに寄ることを提案したんだ。
ピッ、とSuicaを当てて改札口から入っていく私達。
燃料と言われて少し考えた悟は理解したようだ。ククク、と笑って。
「キミの部屋、でっかいお酒あったけれどそれでも足りないの?」
『飲む?この前、七海さんが送ってくれた時と、昨日ちょっと飲んだ程度しか減らしてないけど』
たっぷりあるから長く楽しめるんだよねー、安酒なんだけれど。
こくいももあったけれど名前に引かれたんだよねぇ。
るんるんと宅飲みに思いを馳せる私に悟は眉間にちょっとシワを寄せ、ホームで電車を待つために足を止めた。私も電光掲示板と時計を見て再び悟に視線を上げる。
「僕はお酒下戸でさ、苦手なんだよね。だから飲めないよ。
というかキミ!ホイホイお部屋に男を上げちゃいけません!七海だって男だし、真面目な脱サラ呪術師でも悪い狼かも知れないんだぜ?」
『七海さんは悪くはならんでしょ……うわ、なにその不服そうな表情ー…』