第5章 "好き"が止まらない!
"おい五条"
「あら、硝子。こんな時間に何かあった?重要案件だったりする?」
微妙な時間だしな、リモコンで音量を下げながら電話をする。
B級映画だし、序盤の内容なんてそんなに大したことないでしょ。
"そうだな、重要案件だ。ハルカは近くに居るか?"
硝子、ハルカに用があって僕に掛けて来たのか?本人が電話に出られない状況である、という事かもしれない。
そういう状況はアリだ。春日の一族、未熟な彼女を攫ってどうこうする輩とか。
冷静にリモコンで電源を切って、電話だけに集中した。皿に置いたフォークが滑り落ちてジャーマンポテトの中にカラン!とスライディングしてく。
「……確か今夜は短大だかの友人とディナータイムだと思ったけれど…なんかあった?」
立ち上がってふと、壁を見る。今は外出中のハルカの部屋。
現在は誰も居ない部屋。
硝子は一つ重要案件だ、と言葉を放つ。何が起こったのか。もしも重傷者であれば学びの為に経験として医務室に行かせたいんだろ。変わった傷とかな。
けれどもハルカに直接の重要案件だったら?あまりにも普通に接していたけど、春日の生き残り。彼女はまだ縛りについてを良く知らない。
どっかの馬鹿に攫われて、かつての春日がやっていた様に盾にされる事になったら面倒くさい。それに貴重な自分以外を治す術師であるだけに欲しがられる。術師も、非術者にも。
次第に心に余裕が無くなっていくのを何とか声に出さないように硝子の言葉を待った。
"五条に今日言うのを忘れたんだけれど、ハルカに念押しされててね、"
「──は?念押し?」