第5章 "好き"が止まらない!
はあ、はあ、と走ってきたので息を整えながら、応急手当のされた包帯に血が滲む腹部を見て胸部の側に片手を当てた。
術式を通して呪術で痛みや傷を私の式髪が吸い取っていく為に、傷口からメリメリと音が聞こえる。
コッコッ、と近付く家入がハサミで包帯を切り、そのまま抜き取ってしまった。僅かに見えてる裂傷が血が沸騰するように、肉が内側から盛り上がるように消えていく。
「……急ぎとは言え、状態を確認せずに始めるのは感心しないな。応急手当の下は見えていないからな、傷口に何かが打ち込まれている事もあるかも知れない。もし異変が見られるのなら治療する前に私に言い、その異変を私が調べる。良いな?」
『はい……』
注意されてしまった。確かに自身の呪術は他人の回復に特化しているからとすぐに治そうとしてしまう。
異変があった場合、もし治してしまったとして同じ方法での攻撃などに対応する、事前の情報も消してしまう、よね…。
「これから気をつけていけば良い…で、それは制服か?」
私が答えるより前に悟がしゃしゃり出る。怪我人だった…今は健康そのものの人をぐいぐいとベッドから下ろしてドア方向を指し、手を振っている事から"ここには用がないだろ、帰りな"アピールが伺えた。
「そうそう!今日学長の面談受けて試着してたんだよね。明日からスクールデイズだよー、また青春送れるってどんな気持ち?二回目の青春?」
『遠回しにディスってない?気のせい?』
少し困惑する家入。
言いたくても言えない事情があったので、先に説明することにした。悟を指差して。
『家入さん、私も昨日まで知らなかったんですよ。昨日釘崎さん達にたまたま会って教えて貰わなかったら今日の朝に知るコースでしたもん』
「……五条、お前なあ…、」
家入が文句でも言ってやろうという雰囲気になった時、悟は"あ!"とひとつ叫んだ。
「3日後の歓迎会だっけ?一年ズに言ってこなくちゃねー、じゃあねっ!体術の練習と事務作業、事務作業はとりあえず明日から学業に専念するために今日までって言っとくからねー」
ピシャン!乱暴に閉められるドア。ドア前の私がこの前開けた穴は見事に修復がされている。