第5章 "好き"が止まらない!
『まだ!』
タッタッタ、と駆けてタンスに辿り着く。
隣の部屋に繋がる壁(と書いて通路と呼んでも良いかも)を、カタ…と上げようとしているので、私は小さなプラスチック製のタンスの前にしゃがみ込んでごそごそと黒いストッキングを発掘した所だった。
「へい、大将やってる?」
がた、と片手で壁のスライドを持ち上げた悟。どっかの常連が入ってきたお店みたいだ。というか。
五条悟が入室しました ▼
『まだっつってんだろ!大将準備中!仕込み中!…いや、着替え中なんだけれど!なんで入って来てんのっ!?』
しゃがんでタンスの前に居る私。私から背を向けている為、少し体を捻って悟の方向を見ている。
悟は壁からこちらに来ると、壁がスコン、と閉じる。少し前傾姿勢でこちらを伺い、両手をポケットに突っ込みながらこちらにと進んできた。
にっこにこだ。
「おいおい、着替え終わってんじゃーん、何が着替え中なの?」
『ぎゃー!』
「ぎゃーって…、ハハハッ」
私は片手にストッキングを握りしめ、その場に立ち上がった。
悟は満足げに両手でフレームを作ってそこからアイマスクのままに覗き込んでいる。カメラマン気分らしい。
「うん、ばっちり。僕ったらデザイン方面も優れていたね~流石天才…で、そのストッキングは?履くの?生足でも良くね?」
自画自賛する悟は私の手に握られているものを見て言う。
そりゃあそうだ、動きづらいもの。短いし下着が些細な瞬間に露わになる。せめて丈をどうにかしたい所だった。
『良かないねぇ?履くに決まってるでしょ。ちょっと後ろ向いててくれません?
あーあー、事前にカスタマイズ出来るって直接教えてくれてたら動きやすいのに出来たのになー!パンツタイプとかさー!』
「パンツタイプ?ブルマみたいなって事かな?」
『鉄腕アトムみたいなやつじゃないわっ!チッ!…ズボンタイプが良かったなぁー!』
「あーあー聴こえなーい!」