第5章 "好き"が止まらない!
ちくちくと可愛いぬいぐるみに囲まれた夜蛾学長は羊毛フェルトをして待ちぼうけしていたみたいだ。
思わずその雰囲気に圧倒されて背筋をピンと伸ばしてしまった。怒ってる時の父親に似ていたし。
『すみません!私がもっと早く正確な場所聞いてくれば良かったんですけれど』
「いいのいいの、責めるほどじゃない遅刻だもーん、それに人形作ってんだからそんなに気にしてないでしょ。集中出来るし?」
「お前が言うな、お前が!」
手に取る羊毛フェルトをニードルで刺すのを止め、角度を変えて確認している。
……それ、見たことあるぞ。モルカーだ。ポテトでしょ?完成度高けぇな、おい。
キュートな雰囲気に飲まれそうなのを切り替えて自己紹介をする事にした。
『改めまして。みたらいハルカです、面談…よろしくおねがいします』
ぺこり、とお辞儀をして前を見る。囲まれたぬいぐるみにそのモルカーを追加してその場から立ち上がった。
悟は先程入ってきたドアの側、壁に寄りかかっている。
「呪術高専では何をしたい?ここで呪いを学び呪いを祓う術を身に付け、その先にお前は何を求める?」
ちら、と背後の悟を見る。寄りかかって腕を組んでいる。
学長だけじゃなくて悟にも聞かれるのかー…言い辛いものがあるなあ、と思いながら私は学長を見た。
「どうなんだ?」
『私は…──』
呪いについてを識って、強くなった先に何を求めるのか。
それをたった一言に詰め込んだ。説明すれば長くなるから。
『"生きる為"…です』
「生きる為?その意味はなんだ、みたらいハルカ。お前は春日の血族だと聞いている。その春日である者が生きる為を理由に呪術高専で何を学ぶと言うのか?」
何を言ってるんだ?と言いたげな学長に意味を伝えることにする。どうせこういう根掘り葉掘り聞かれるのが面接だ、これは面談だけれど。それから聞かれたくない悟が居るけれど。
笑われちゃうんだろうなー、どうせっ!とちょっとやけになってしまいそうだ。