第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
他の本を退かし、ソファー下やらベッド下やらも確認しながら小さくないはずの捜し物をする。見つからないけれど。
まあ、この部屋にあるとは限らないし…。急ぎだとは言え、ずっと暑い中での作業は疲れたな。まさかの夏だなんて思って無くてなんの準備もしてない。
『ふー…』
……疲れたからちょっとだけ座って休もう。
ボロボロのソファーに腰掛けると、ドスンッ!と片足が潰れて斜めになる。私の体重ジャナイヨ…?急いで立ち上がって、ベッドの方に腰掛けた。ギシッ、と軋んでちょっと埃っぽいけれど。
せめて窓が開けられれば涼しかったろうに。カーテンもボロボロだし、この部屋が一番日差しが入る部屋なんじゃないのかな?
『……くらくらしてきた』
少し休んだら悟にちょっと手伝ってよ!と頼もうかな。ひとりじゃ作業が捗らない。
5分くらい、それくらいで良いから私に休ませて。ぷつんと糸が切れたみたいに埃っぽいベッドに汗ばむ身体を横たえた。
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だるさの中で数分だけ目を休めたように瞼をゆっくりと開ける。なんだか涼しい。
眼前には風に揺れる木々の枝、葉。青空と流れる雲……そして白いシャツの悟が私をじっと覗き込んでいた。
「おっ、気が付いたか?」
『……へ?』
建物に居たはずなのに明らかに外にいる。木陰の中、自然の風が凄く涼しい。さっきまでの蒸し暑い部屋と大違いだった。
寝かされてた体。肘で少し体を起こせば建物が見えて…直ぐ側には杉の木じゃない、何か大きな木があって。その木の側には塀。どうやら大きな屋敷の敷地内なのは変わりないみたい。
あんなに暑かったのに木陰に居て、汗をかいた体が風に当たり続ければ、上着を脱いでるからむしろ寒いくらいに涼しいんですけれど。というかなんで私外の地べたに寝てんの?
私のすぐ側に座ってる悟の顔は呆れるような表情だった。
「オマエ、二階の部屋でぶっ倒れてたから俺がこっちに運んだんだよ。よくわかんねーけど。熱中症?脱水症状?そういうのじゃねえのかって、とりあえず日陰に運んでやったの!」
『……ありがと、悟』
ぶっきらぼうに私がここに寝かせられるまでを説明する悟に私が素直にお礼を言えば、真顔になってじっとこちらを見ている。
「……おう」