第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
キョロキョロと周囲の変化を確認しながら、ポラロイドカメラは流石に室内だろうな…、と建物の入り口へと進む。敷石は大きくて長方形ものが点々としていて、足音はしないけれど、敷石のない場所には玉砂利がある。そこを踏めばジャリ、と音を立てた。それくらいで私以外の人為的な物音はせず、ずーっと鳴きっぱなしの蝉の声と、時々野鳥が鳴いてる。騒がしい男の声も、やらかす音もしない。
玄関に辿り着き、数段の階段を登って大きな扉の前に立つ。
外側を見るに鍵が掛かってるんだろうな、とは思うけれど。木材とかで打ち付けられてなくて良かった、と思いながら扉の隙間から"怒髪天"をスルスル…と流し込む。きっと鍵掛かってるのならこの辺に……。
「開いてますよー、おいおい…しっかりそういうの、確認しろよ?」
内側からの男の声に驚いて手が止まった。術式も。
ドアノブに手を掛ける事もなく、ガチャ、とゆっくり開く扉。建物内に居た人物、内側から現れたのは走り去ったはずの悟だった。
ふぁさっ…、と鍵を内側から開けようとしてた、召喚した遺髪が力なく床に落ちる。そのまま床に溶けるようにフッ…、と消えた。もう鍵開けをする出番はないし…と、呪力を回すのを止めたから。
『……どうして、手伝わないって逃げたんじゃあ、』
気分屋な所はあるけれど、きっと悟はもう居ないんだって思ってたのに。手伝うわけがないと諦めてたのに彼がここに居る事に驚いちゃった…。
見上げた目の前の彼は何か言いづらそうにガシガシと後頭部を掻き、視線を私から反らす。表情はめんどくせえ、とでも言いたそうな顔。
「俺もここの任務だったの!つってもオマエに会う前に目的の呪霊は祓ってるけどよ…、」
『祓い終わってんならどうしてここに居るワケ?』
任務が終わったって事。
なのにふらふらしてたりして。もしかして…。
ふふん、と含み笑いしつつ悟を指差した。
『……やっぱサボってたんでしょ?不良キッズめ』