第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
『普段の私が使うには私が私自身か他人を治療する体験をしないといけないんだけれど……』
いわばリース。借り物の力。例えば、母が肺だけを引っこ抜かれた人間を治してたら、それを一時的に私は相手にその症状をぶつける事は出来るけれど、母を私の中に降ろしていなければ使えない。使うなら、その症状の人物を私自身で治療して私だけの経験として覚えさせないといけない。
先祖を降ろすのには呪力が必要。ならば自分で経験を積むのが一番という事。
不機嫌な悟は頬をぷくっ…と膨らましてる。
「こういう時は相談が一番だね。お母さん呼んでよ、割と春日家反対派のキミのお母さんなら叱ってくれるもんねー!みのさん、テレフォンでオナシャス!」
『クイズミリオネアか?京都でファイナルアンサーだよっ!ったくなんでこの問答の為だけに母さん呼ばないといけないの?やだし、めんどくさい』
呼ばれた母も戦いの場か?と思ったら京都に出張するのどっちだ?って聞かれて迷惑でしょ。こっくりさんじゃねえんだぞ?
母を呼ぶのをしないっていう私の態度に調子に乗る悟。
「呼んで?ほらほら、ママに叱られるのが怖いのかなー?ハルカの体を借りてお尻ペンペンされるのが嫌なのかなー?」
悟は口の端を指で引っ掛け、舌をぴろぴろと出してる。むっかぁ…今どきの小学生でもそんな分かりやすい煽りはしねえわ。
……ぶっ飛ばすぞ?と舌打ちをしつつ、仕方無く相談するために術を使うことにした。この度はこっくりさんのような扱いをさせてもらいます、母さん。
『……母さんと結託して悟ぶん殴るからね?マジモンのレディースと私のプロレス技で悟を泣かしてやるから。
──髪降ろし"龍子"』
平然としたままに、自身の中に芽生える自分とは違う意識、そして記憶。様々な術式が見える。
ふふ、と笑う声が、思想が心に響いた。
『"何か用かな?"……こっちの高専から姉妹校に二週間お勉強しに行こうと思ってるんだけれど悟に駄目って言われてるの。母さんはどう思う?』
他の人なら母さんを降ろしてるかどうかなんて演技なりでごまかせるかもしれないけれど(しないけど)悟には六眼があるから私の中にあるものも見えているはず。私の言葉に含まれる母の言葉に反応して、彼の意見をぷりぷり怒りながらぶつけてきた。