第11章 1.いの一番
「あとは靴を買って…」
あれから数か月。
静雄に「働いて自分の事は自分でするので、ここに置いてください!」と頼んだところ「そんなこと気にしてたのか」という一言でスバルが悩みに悩んでいた問題は解決。
無事に静雄の家に住むことが継続となったスバル。
人生で2度目の受験に合格をすると、臨也からしてもらっている事を伏せて静雄に話した。
「いいんじゃねえの?」とだけ彼は言うと翌日「ドンキで安かったから」と新品の学生カバンをスバルに渡した。
正直なとこと、臨也がなぜこういったことをしたのかはわからない。
セルティのいう通り何か裏があるには違いないが、スバルには美味しすぎた餌だった。
「すみません、これ無いですか」
通学のための物を揃えつつ、これから始まる学校生活に胸を膨らませる。
自分のもといた世界はというと、夢魔が地区におりなくなって平和そのもの。
他の地区の魔法少女は絶賛奮闘中で、このまま地区への夢魔が確認できない場合3人の捜索が打ち切られるかもしれないという話も出ているらしい。
しかし、スバルの方も何も手がかりがないことから何も文句が言えないのである。
「紀田くん!紀田くんなの!?」
駅構内が近道だからと通りかかると、男の子が2人久しぶりだなー!と話しているのが聞こえた。
(いいなあ、あっちの友達は元気かな…)
向こうの友達は愚か、ここにいるはずのめるりとも再開はできていない。
というよりまるりの一切の消息が不明なので探しようがない。
めるりとは魔法少女の姿でしか会っていないのでこの広い池袋の街で姿がわからない人物を探すなど困難。
姿を知らない人を探す、でスバルは昨晩のチャットの事を思い出す。
チェットでいつも話しているメンバーの1人である田中太郎さんがこの池袋に越してくるという話だった。
(みんなでオフ会とか甘楽さん言ってたな…でもネットで知り合う人たちと会わない方がいいとか前にめるりが言ってたし…)
その時スバルの携帯が鳴る。セルティからの仕事のメールだった。
「女の子を助ける仕事で、誤解を生まないために同行するってことね…「招致しました」…と」
セルティから貰っているバイトも慣れてきており、また今日もその予定が入った。
今日から非日常のが始まった少年が居るとも知らずに、スバルの日常は稼働している。
