第10章 準備
『じゃあまた連絡するから』
ひとしきり仕事の話をしてスバルは帰ろうと腰を上げたとき。
『ピンポーン』
インターホンが鳴ったので「誰だろう。仕事の人だったらメールでくるのに」と新羅が開けに行くと「わあ~~!どうしたの!」という声が聞こえて首をかしげる。
スバルはお邪魔かと思いそそくさと帰る準備をしているとその人物はリビングへと入ってくる。
「やあスバルちゃん」
立っていたのは会うのはこれで3度目、折原臨也だった。
「どうしたの。くるならメール入れておいてほしいな。静雄と出くわして家が壊れるのはごめんだよ」
かなり親しそうに話しているので知り合いだったのか、と理解する。
『何しに来たんだ?』
セルティはあまり好意的ではないらしい。早く用を済ませて出て行ってくれとでもいいだけな態度。
「人の家に上がっておいてなんなんだけど、用があるのはスバルちゃんの方だよ」
すると3人の事を眺めていたスバルに近づき、持っていたでかい茶封筒を渡した。
「これに乗るも乗らないのも君の自由だし、ただのプレゼントさ」
スバルはぽかんとしていると臨也は「じゃあそういう事で!」とそそくさと帰って行ってしまう。
茶封筒の中身を確認すると何枚かの書類とカードのようなものが入っていた。
「…健康保険証…?」
カードは健康保険証、すなわち身分証だった。
よくできているがこんなものスバルは作った覚えもなければ作れるわけがない。
他の書類を確認すると「来良学園」という学校名が入ったところの受験票が入っており、それに準ずる書類が入っていた。
「学校…?」
確かにスバルは学校が恋しく感じていたが、思わぬところから思わぬ形で飛び込んできた話なので混乱していた。
セルティと新羅も机の上に広げられた書類を見て混乱している様子だったが、全ての書類に目と通すとあることに気が付いた様子だった。
「名前の欄が「平和島スバル」になってるね。なんのつもりなんだろう」
「え」
新羅のいう通り書類を確認すると苗字が全て「平和島」になっており、保護者が平和島静雄という事になっている。
「静雄パパ…」
スバルが思ったこと、この場の全員が思っていたことを口にすると新羅とセルティは笑い転げてしまう。