第3章 他人(ひと)ん家(ち)
「財布の中身は学生証くらいしか手掛かりになるものが無いなぁ。あとポイントカードが沢山。未成年だし保険証の類は親に預けているのかもね」
新羅はスバルの高校のホームページを適当にスクロールしながら流しみをしている。
「起きて事情を聞かねぇとなんで池袋に居たのか分からねぇってことだな」
頭に包帯を巻かれて胴と腕にギプスをした痛々しくなった少女をちらっと見る。
「そうそう!それでこの子の家に行って、傷物にした責任を取りますって言ってこの子の将来を約そ…………」
調子に乗った新羅が最後まで言う前にリビングのテーブルが拳によって割れた音がした。
「丁度テーブルを買い換えようと思っていたんだ!」
咄嗟に無理やりテーブルの話題に切り替えたが、静雄はイライラしている様子だった。
ぼやっとだがスバルは意識が戻ってきていた。
始めは自分の頭の上で交わされている話声をうるさいなぁと思っていただけだが、徐々にハッキリと思い出してきた。
(何か突然話しかけられて……?私巻き込まれたくなくて…?それからどうしたんだっけ…?)
ゴミ箱をぶつけられた時に転倒し、頭を打っている為前後の記憶がかなり曖昧なのである。
暫く物事をゆっくりと考えていると次第に目が開けられるように回復した。
「うっ………?」
なんとか声を絞り出すとすぐに静雄が顔を覗き込んできた。
「おい大丈夫か?!」
何となく日本語を話されているのは分かったがまだハッキリとしていないスバルの脳は何と言っているのか理解出来ておらず「?」という顔をした。
「意識が戻るのが思ったよりも早かったね。これ、わかる?」
新羅は近づくとスバルの顔の前に手を見せると指で「1」を作った。
「……ゆび……?」
スバルがそう答えると「本当は1って答えてほしかったんだけど、まぁいいや」と苦笑いした。
ぼーっとその様子を見ていたスバルは今どういう状況なんだ!?と突然ハッキリとした。
「あのっ…!!?!ぃっ…たぁ……」
スバルは体を起こそうとしたが激痛が主に上半身に走った。その拍子に少し起きた体はバタッと再び床に戻る。
「…?!?…?!」
よく考えると普通に仰向けでいるだけでも痛く、なんだか全身がズタボロだということに気がついた。