第2章 違う日本
「ふんふーん」
とあるマンションの一室ではここの住民の一人、岸谷新羅が自分の仕事道具である医療器具を片付けていた。
岸谷新羅は正規の医者ではなく、いわゆる闇医者だ。
もうじき帰ってくるであろう(今は一方通行の)愛する人を待つばかりである。
『ピンポーン』
家のインターホンが鳴ったので来客だとゲンナリした。
「はーい。ったくもう、セルティとの時間がもうすぐ始まるのに」
のそのそ嫌々と来客を出迎えようと席を立つ。
『ピンポーン ピンポンピンポピンポピンポーン』
このようにせっかちにボタンを連打する人物は大体分かる。きっと小学生からの友人の、暴力が服を着て歩いている彼だろうと。
「全く、そう何度もインターホンを押すのやめてって…………どうしたのそれ?!」
嫌々と扉を開けると予想通りの彼、平和島静雄が立っていたがその背中には頭から血を流した女子高生が背負われていた。
「ついに人を!?それに女子高生!言っておくけど保釈金は払わないよ」
ポンポンと勝手に話を進める新羅に静雄はイライラして「死んでねえから早く治療しろ!」とでかい声を出す。
「命に別状はないけど、骨が何本かと頭に切り傷があったから縫ったよ。肋骨と腕の骨折で全治数ヶ月って所かな」
少し、いや結構変な奴だが腕は確かなので治療はすぐに終わった。
女子高生はまだ気絶している様子で、治療をしている間にあったことを話すと「それは君が悪い!」と新羅が言うのでグウの音も出なかった。
「病院に連れてくにも、警察沙汰になるだろうし俺も多分コイツもそれは望んでねぇからここに連れてきた」
静雄は荷物が少なすぎる少女の事を見て家出にしても遊びに出かけるにしても荷物が少なすぎると思っていた。
自分も傷害でパクられる上に、この少女が訳ありだとしたら誰も幸せにならないからだ。
「この子の荷物は携帯と財布と、あとは腕に付けてるアクセサリーくらいだね。財布の中身を見せて貰ったら学生証が入ってた」
少女の持ち物を机の上に出して身元を調べられるものをさらに中から出した。生憎携帯はロックがかかっているし、そもそも年頃の女の子の携帯を見ることはあまりしたくないものだ。
学生証から愛知県に通う高校生、安中スバルだと言うことが判明した。