第16章 見掛け倒し
「あれ?那須島先生セクハラっすか~?」
その一声で杏里の肩に手を置いていた教師は急いで杏里から距離を取った。
「わ!幼気な眼鏡委員長に声まで出させて、本格的なセクシャルハラスメントってやつっすか?」
教室の扉から顔を出して声をかけたのは正臣。その正臣の対応で場は丸く収まりそうだと思ったスバルとるいは正臣につられて穏やかな空気に戻る。
「むしろセクシーハラショーっすか?」
正臣のセリフに思わずくっくっくっと笑っていると那須島は正臣以外に見ている生徒が居たのかと焦った顔で2人を見た。
「セクシーハラショー、ですか?」
スバルは思わず馬鹿にしたような態度で笑いながら那須島を煽ってしまう。
「なっ…。紀田正臣、ふざけるんじゃない。園原、勘違いして変な噂流さないでくれよなあ…」
教師らしく場をいさめようとしたようだが時すでに遅しである。
那須島は変態教師要注意人物としてスバルとるいにインプットされた。
「彼女がそんな軽薄な女に見えますか?」
正臣はどっか行けというように杏里に近づくと那須島は焦りまがら「頼むぞ全く」と笑いながら去ろうとした。
「むしろ噂は俺が流すんで安心してくだーい」
その正臣の一言が原因かどうなのか、廊下の隅に置いてあったバケツにつまずいて転びかけていた。
「ふっ…ふひひっ…正臣最高」
スバルとるいが見ていることに気が付いていたようで、声をかけると「ご清聴ありがとう」とでも言わんばかりに小さく手を振る。
杏里は正臣に軽くお辞儀をした。
するとそこへ帝人が掃除道具をもってやってきた。
結局そこへ居合わせた5人で下校することになり、公園でアイスを食べながらしゃべることになった。
「でもさ、マジで気を付けた方が良いぜ。那須島の野郎。噂は大半が噂だけど、教え子に手出したってのはマジだから」
帝人、スバル、るいはテレビで見るようなことが身近にあったのだという衝撃に驚いた。
「それで次は杏里ちゃんってワケ?最悪な上に最低だね」
大人しいからと言い返せなさそうな子を狙っているのだとスバルは思い杏里の頭をつい撫でる。
「贄川春奈って2年の先輩でさぁ、去年の2学期ごろ転校したんだがそれが那須島と付き合ってんのがバレそうになったてんだよ」
思わぬ話が出てきて帝人とスバル、るいは「マジで…」とただただ引いていた。
