第12章 農業生活十二日目
目覚めれば、リヒトの姿が無かった。ほのかに感じるリヒトのぬくもりがベッドに感じる。まだ、起きてそう時間は経っていない。それでも、不安になってリヒトを探す。
想像通りに、キッチンにも居なかった。でも、テラスに佇むリヒトを見つけて、駆け寄って抱き着いた。
「莉亜?ごめん・・・不安にさせちゃったかな。でも、僕は何処にも行かないから安心して。」
「双子に何を言われたの?」
「付き合ってあげるから、莉亜とは別れろだって。思わず笑っちゃったら、気に入らなかったみたいで叩かれちゃった。」
自意識過剰?って、リヒトはどんな笑い方したんだろう。
「折角だから、二人を選ぶことは未来永劫ないって言っておいた。」
それで、怒って帰ってった?
「また、来ると思う?」
「残念だけど、そうだろうね。昔から、人の言うことなんて聞き入れないから。それに・・・ここは、独特だよね。特に若い人ほど。」
普通は逆だと思うんだけど。でも、そこは本当にそう思う。
「だから・・・ラブラブなところ、見せつけようかと思って。」
「えっ?どういうこと?」
「さぁ、どういうことだろね?」
質問を質問で返された。でも、何か企んでいるよね。
「さ、ご飯しようか。手伝ってくれる?」
「うん。勿論だよ。」
キッチンに立ち、楽しく二人で調理する。トルティーヤを焼いて、野菜とハムを巻き、トマトと卵のスープとシーザーサラダがメニュー。いつものように、テラスで食事。
「莉亜。」
「ん?美味しいよ?」
「それは顔を見ていたら分かるよ。」
リヒトの指が頬に触れる。
「今日は、パンケーキを作ろうと思うんだ。メープルシロップいいかな?それで、莉亜にも食べに来て欲しい。」
「うん、行く。楽しみ、パンケーキ。じゃあ、果物も必要だね。丁度、ベリー系があるからそれ使って。」
リヒトは、ジッと私を見ていた。
「リヒト、どうかしたの?」
「ん?あぁ、莉亜を食べたいなぁって。」
人差し指が、ゆっくりと頬を撫で甘く微笑む。
「リ、リヒト・・・明後日、お店はお休みだよね。だから・・・明日、どうかな?」
リヒトの目が丸くなっている。
「良かった・・・独りよがりじゃないみたいで。好きだよ、莉亜。」
「わ、私も・・・好き。」
もう、リヒトの顔が見られない。恥ずかしくて・・・・。