第10章 農業生活十日目
帰り道、ルディのことをリヒトに話した。連れて行かれたことも含めて。すると、ルディの顔から笑みが消えた。でも、それは一瞬だった。
「ねぇ、考えてくれた?僕が朝言ったこと。」
「えっ?あ・・・。」
顔が赤くなっていく私。まさか、そんなことを外で聞かれるとは思ってもみなかった。
「お、お店が落ち着いてからがいいよ。」
「無理。」
えっ、即答??
「明日。明日がいい。」
「明日って・・・。」
「気持ちの準備しててね。」
あ~、反論無理なヤツだ。リヒトの中では決定事項なんだなぁ。淡泊なんだと思ってたけど・・・。
「ねぇ、リヒト。家を改装しようかと思うんだけど。ほら、二部屋を一部屋にしようかと思って。」
「大賛成だよ。」
嬉しそうにするリヒト。リヒトの方から、改装の話しをしてくれるらしい。壁さえ壊してくれればいいんだけど・・・。私がお風呂に入っている間、リヒトがジルドに連絡してくれた。
リヒトと入れ替わり、私は二階にある機織り機へと来ていた。想像通りの布地が出来上がっていた。織り上がった布地を棚へと運んでいると、湯上りのリヒトの声がした。
「二階にいるよ~。」
「ここにいたんだ 。って、それは・・・布地?綺麗な色だね。」
「これで依頼して誂えて貰っているの。リヒトにも何か作って貰うからね。私はワンピースにして貰うの。」
リヒトにいきなり抱き締められた。
「リヒト?」
「ルディには気を付けて。」
「うん。」
心配症なリヒトに抱き付き、暫く熱い抱擁。ドキドキするけど、一番落ち着く場所でもあるんだ。
でも、翌日・・・そう、展開は意外なところへ・・・。
明日の騒動のことなど思いもせずに、私たちは穏やかに時間を過ごし眠りに落ちた。