第9章 農業生活九日目
「莉亜、何してるの?」
「醤油取りにね。」
ボトルを見せると、リヒトが手にした。ラベルに目を走らせている。
「何に使うの?」
「チャーシュー作ろうと思って。ほら、明日、ケビンさんが来るから。」
目がキランとしたリヒト。でも、私がクシャミした事によって、家の中へ連行されていった。
「大丈夫?湯冷めしてない?何か温かい飲み物作ろうか。」
キッチンへ行こうとするリヒトを捕まえる。
「心配し過ぎだよ。大丈夫だから。」
「じゃあ、僕が温めるよ。ほら、部屋に行こう。」
部屋・・・改築が必要かなぁ。リヒトの部屋で一緒に寝てるし、私の部屋には着替えに行くだけだもの。うん、相談してみよう。
ベッドに入ると、リヒトが近い。物理的にも温められている。そして、スリスリされている。
「ねぇ、莉亜。今日はありがとう。助かったよ。でも、村長には控えて貰わないといけないなぁ。結局、1本持ち帰ったし。」
「えっ、そこまでワイン好きなの?」
「仕方ないよ。現実美味しいからね。実は最初の一杯、景気付けで飲んだんだけど・・・カミルがヤバかったなぁ。」
何やら、思い出し笑いしている。
「気付かなかった?途中で不機嫌になったの。あれ、ワインを自腹で飲みたかったんだよ。結局、売り切れちゃったからね。」
そう、売り切れた・・・。だから、次からはボトルの販売は止めたらしい。私は何気に口にした。
「チェリー酒出したら、どうなるんだろうね。」
「ケビンさんとバーク村長が囲いそうだな。させないけど。」
そう言って笑う。リヒトが私の額に唇で触れる。そして、そのまま動かなくなったリヒト。見上げると、眠ってしまったらしい。そんなリヒトの髪を撫で、私も目を閉じた。
リヒトの腕の中は心地よくて、私も直ぐに意識を手離した。