第71章 春十三日 R18
朝・・・そう朝。それも、朝食前の時間。何故、こんなことになっているのだろう?ちょっと回想しよう。
いつもと同じ様に目覚めた私たち。アオイとキスしていると、うん?キス?ま、まぁ、そのことは今はいいや。
玄関先から声が聞こえて出て見れば・・・真っ赤な薔薇の花束を手にした早朝に目にするには刺激的な全身ピンク色の衣装を身に纏ったドロスがいた。
冷静だったアオイが、薔薇はピンク色ではないのかと言っていたのは私も同意した。
「おはよう、マイハニー。ようやく、私は気付けたんだ。莉緖が運命の相手っ!!」
あ、最後まで話しを聞く前に、アオイがドアを閉めた。丁寧に、施錠までしている。
「さ、朝食の時間だ。準備を手伝うよ。」
アオイの中では、終わった事になっている。しかし、ドアを乱暴に叩く音がする。そして、運命の相手に使う言葉ではない乱暴な言葉遣いが響く。
「莉緖、キッチンで待ってて。僕がヤッてくるから。莉緖は出てきちゃダメだからな。」
私をキッチンに追いやってから、アオイはどうやら玄関のドアを開けた様だ。怒鳴り声は急に止まった。それと共に、ドアが閉まる音がした。
ん?何か、ゴンッって音?
暫くの間、アオイは戻っては来なかった。そう言えば、ヤッてくるって言っていたけど、別の意味のヤッてじゃないよね?まさかね、アオイはお医者様だもの。
さ、気を取り直し朝食作りだ。何がいいかなぁ?
朝食の準備が終わった頃、やっとアオイは戻って来た。
「ただいま、莉緖。ちゃんと駆除・・・お帰りいただいたよ。」
アオイ、駆除って言った。それにさっきの鈍い音って。
「ありがとう。」
うん、気にしない。だって、アオイだもの。二人で朝食を食べてから、畑に出る。今日も空いたスペースに種蒔きだ。
「この種は何?」
「芽キャベツだよ。貰った浅漬けが美味しかったでしょう?だから、また食べたいなぁって思って。」
「それはいいね。」
この世界では、可愛いサイズの芽キャベツがどんどん育つ。それが堪らなく可愛い。
「この後の予定は?」
「メープルシロップの採集よ?」
「へぇっ、見て見たい。」
私も見たいし、食べたい。そして、今日は茶畑にも行かなくちゃ。機械に入れて、茶葉として使える様にするのと、茶葉を挽いたものも用意する。