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牧場物語生活へトリップ!?

第70章 春十二日


「何かあったのですか?」

アオイが尋ねると、再び険しい顔になった二人。

「言いたくないなら無理にと言いません。」
「私を・・・私をね、嫁に貰い受けたいって。」
「「嫁っ!!?」」

アオイと同じ驚き方をしてしまった。

「兄さんはね、町で居た時からお店をしていて繁盛していたのよ。だから、私が嫁に行ったら、また町に戻って店をやればいいって。この店を買い取るから、資金の心配もしなくていいって言うの。」
「俺はこの村でこの店がやりたくて、町で努力して来た。それに、ミランを売るような形で町での出店の資金を用意するなんて馬鹿にしているにも程がある。」
「何よりも、どうして二十歳の私があんな人の嫁にならないといけないのよ。私にだって選ぶ権利があるわよ。」

最もな意見だ。私も賛同する。

「それにだ、嫁にって言いながらあちこちで同じ事を言っていると聞いてるんだ。」
「どういう事ですか?」
「この村の住人の誰かと縁続きになって、この一帯を買い占めて何やら事業をするらしい。ただ、あいつが望む相手の対象が十八歳から二十代半ば。幾ら金持ちでも、図々しいと思う。その上、容姿も吟味しているらしい。」

お店をやっているから、あちこちから話しを聞くそうだ。人の好みはそれぞれだけど、一般的な女の子が肯定する条件とは思いにくい。

その後、せっかくだからと幾つかの佃煮を購入して帰宅した私たち。今晩の夕食のお供にしようと考えながら、メニューを思案する。

「ねぇ、アオイ。ロールキャベツは好き?」
「食べた事ないから、食べてみたい。」
「じゃあ、夕飯はロールキャベツに決定。」

食べた事がないロールキャベツ。アオイは一体、どんなものを食べて生活していたのだろう?

そして、あんな話しを聞いたからか、アオイは中々私の手を放してくれなかった。やっとの思いで放してくれたアオイだったのだけど、この世の終わりみたいな顔をされて心が痛くなった。

それでも、後でハグをお願いしたら、いつもの輝かしい笑顔を見せてくれた。ひょっとして、これはアオイの策略だったのだろうか?

でも、アオイだから許す。好きな人に恋慕われるのは特別なことだと、ちゃんと実感したいし忘れないようにしたい。
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