第67章 春九日
私・・・余程、寂しかったのかな?まぁ、そこは分からなくはないのだけど・・・。朝目覚めて、何故かアオイに腕枕されてた。
きっと、私が無意識に・・・。
「おはよう、莉緖。」
「お、お、お、起きてたんですか?」
「つい、さっきだけど。莉緖も早起きなんだね。よく眠れた?」
私は飛び起きて、土下座せんばかりに頭を下げた。
「どうして謝るの?可愛い恋人に擦り寄られたら僕は嬉しいとしか思わないけど。」
アオイの眩しいほどの笑顔と、甘い言葉に真っ赤になってしまう。可愛い恋人なんて言われてしまった。
「うん、何か僕としてもしっくり来るから、やっぱり付き合う事に決めたことは間違いじゃなかったな。莉緖は素直で可愛いし、これからは大事に甘やかして庇護するから安心して?昨日の馬鹿な事をしたヤツには、僕からきっちりお仕置きの拳骨しておくから。」
最後の言葉は、少々物騒だった。
そう言えば、何だかんだでお試しの言葉は消滅したんだ。
ちょっと、私としては気持ちがついていかない。失恋して直ぐにこんなに甘やかされるなんて想像もしていなかったし。
ただ、セトと違って直ぐに手を出して来ることはなかった。その事にホッとする。
アオイが起き上がると、私はまたしても目が・・・。どうして、上半身裸で下は下着だけ?
「あぁ、ごめん。僕面倒くさがりで殆ど裸なんだよね。」
「そ、そう・・・ですか。」
程よく引き締まった上半身と割れた腹筋。目の保養?
「僕の身体、お気に召した?」
つい、見詰めていたことに気付いて、慌てて後ろを向く。が、いきなり後ろから抱き締められて、余計に慌てる私。
「可愛い・・・。」
耳に触れる吐息と、甘い声に体が硬直。でも、直ぐに腕は解かれ私の頭を撫でては隣りの部屋に行ってしまった。
隣りの部屋はアオイの部屋だ。着替えに行ったのだろう。私は直ぐに着替えては、身支度をしてキッチンへと向かった。
「アオイさんは、朝食食べる派?」
「莉緖、アオイでいいって言ったよね?敬語もなし。」
綺麗な微笑みに似つかわしくない圧のある声。
「ア、アオイは朝食は食べる?」
「うん、食べるよ。その方が頭も働くから。」
やはり、食事は誰かと一緒がいい。そして、今朝も私の手捌きを興味津々で見ているアオイ。目がキラキラしている。