第65章 春七日
いつもの穏やかな朝。相変わらず、私の胸に顔を埋めて眠っている風を装っているアオイ。有無を言わさず、ベリベリと剥ぎ取る。
「おはよう、アオイ。」
「・・・おはよう。」
「怒ってる?」
「怒ってない。ただ、名残惜しいだけ。莉緖の胸柔らかくて気持ちいいからちょっと残念。」
真っ赤になる私を見上げては、ニヤリと笑うアオイ。
「あ、身体だけが目的とか勘違いするなよ?俺は欲張りになることにしたし、明確に思ったことを口にしてるだけだから。」
「オープン過ぎるのはドキドキするから・・・。」
「ドキドキさせるのが目的なんだから、俺の意図は成功だな。さ、おはようのキス。」
逃げ出そうとした私は繋ぎ留められ、決して軽くはないキスをされてしまった。いきなり剥ぎ取ったからそれに対する抗議だろうか?
真っ赤なまま、二人で朝食作り。
「莉緖、味見。」
ちぎったレタスを口元に差し出された。悔しいけど、美味しそうだったので齧りつく。
「あ、このドレッシング美味しい。」
「良かった、成功して。ん?お替り?じゃあ、あ~ん。」
言葉に釣られて口を開けると、何故かディープなキスを受ける羽目に。アオイの舌が口の中で巧みに動き、舌を絡め取られてしまう。
腰に回された腕で、逃げることも出来ないまま唇を奪われ続けた。
「少しずつ俺に慣れてくれな?」
思い切りいい笑顔である。またまた悔しいけれど、カッコイイから始末に負えない。
「う、うん。」
「素直で嬉しい。さ、食べようか。」
今朝はいつもの朝食メニュー+果物。何だかんだ食べさせ合いしながら、イチャイチャ。
そして、今日も私に抱き付いて行きたくないと駄々を捏ねてから病院へと出掛けたアオイ。
私はと言うと、中止していた宿屋の為に野菜を収穫しては、取り戻すかの様に出荷した。
そう・・・今日も、同じ一日が過ぎるだけだと思っていた。
例に漏れず、差し入れを持って向かった先は病院。
「あれっ、鍵開いてる・・・ま、まさか元カノがっ!?」
奥の部屋に飛び込むと、アオイと初めて目にする長身の男性がいた。身内かの様に、アオイに拳骨を落とした瞬間を目の当たりにしたんだ。
「アオイ・・・?」
名を呼ぶと、何故か拳骨を落とした男性も私を見た。