第45章 農業生活 夏 十二日目 R指定
目の前には、リヒトの寝顔があった。随分、慣れてはきたと思う。愛しむ様に抱き入れられた体は、リヒトの温もりで満たされていた。
心地いいリヒトの体温と心拍の音。そんなリヒトに擦り寄れば、スッと開いたリヒトの瞳。
「おはよう、リヒト。」
「おはよう、莉亜。」
ギュッと抱き締められるリヒトの感触。リヒトに大事にされて、現実での痛みは薄れてきている。不安は仕方ないにしても、今ではリヒトを心から信頼している。
現実でリヒトみたいな人がいたら、女の子が放っておかないだろうし、平凡な私など見向きもされないだろう。
いつか・・・この夢のような世界から、引き戻される時が来るかもしれない。そんな事を思えば、急に怖くなった。
現実であったことを、この世界であったことのように話したけれど・・・。出来る限り、リヒトの傍にいたい。
「莉亜、どうかしたの?泣きそうな顔してる。」
「幸せを噛み締めてただけ。」
「僕も幸せだよ。こうやって、莉亜と共にいられるのが。怖くなるくらい幸せだよ。」
ずっと、傍に居て・・・二人が同じ思いを同じ言葉を紡いでいた。
「余計なこと考えられないくらい、夜は愛してあげるから。楽しみにしててね。」
「うん。」
抱き合い、たくさんキスしていたけれど、物凄く不服そうにケビンが来ることを言ったリヒト。それに、思わず笑ってしまう。
いつものようにカウンターで、リヒトを見ている。
「フフ、物欲しいそうな顔してる。そんなに僕が欲しい?」
そんな事を言われて、顔が赤くなる。
「そ、そんな事・・・。」
「自覚ないの?今の莉亜の顔、凄くそそられるんだけど。僕を誘ってるんじゃないの?」
そんな嬉しそうな顔で、そんな事を言わないで欲しい。恥ずかしくてたまらない。それに、今の私ってどんな顔しているんだろう?
「じゃあ・・・僕も莉亜を誘ってみようかな?それとも・・・ここで、僕に襲われたい?」
「えっ、そ、それは・・・。」
「冗談だよ。ケビンさんが来るし、莉亜の可愛い顔を誰にも見せたくない。だから、今は我慢してね?莉亜がどうしてもって言うなら・・・考えなくもないけど。」
無理っ!!恥ずかしくて死ぬ。プルプルと震えていると、リヒトの大きな手が私の頬を撫でた。
「後のお楽しみにってことかな。僕も楽しみにしてる。」