第41章 農業生活 夏 八日目
今朝も元気はつらつのリヒトが先に起きていた。何となく、朝から機嫌が良さそうに見える。そして、朝の挨拶の後、濃密なルーティンが三度ほど交わされる。
「リヒト、大丈夫?」
「うん?僕なら全然元気だよ。清々しい朝だね。」
それは良かった。シャワーを浴びて、キッチンへと行く。
「ねぇ、リヒト・・・その鎖骨の赤いのって・・・。」
「ん?あぁ、莉亜が僕にくれた元気になるお呪いだよ。」
卑猥なのに、どうしてここまで爽やかに見えるのだろう?そして、それを見せつけないで欲しい。いそいそとボタンをもう一つ留める私。
「見えてもいいと言うか、見せたいんだけどなぁ。僕が莉亜のものだって証なのに。」
本気で残念がっているリヒトに、私は溜め息を吐く。そして、昨日の私・・・いつ、付けたんだろ?
「昨日はいっぱい付けてくれたよね?」
ニコニコとして嬉しそう。
「リヒト・・・程々にって言わなきゃ・・・。」
「どうして?僕はいっぱい付けてくれて凄く嬉しいのに。昨晩の莉亜はいつも以上に可愛かったなぁ。」
昨晩の私、何をしたんだろう?よく覚えていない。慣れて来たとは言え、恥ずかしいものはやはり恥ずかしい。
「あ、お茶プリン取って来るね。」
昨日、大量に作ったプリンを作業場へと取りに行く。
「うん、いい感じに固まってる。」
キッチンに戻ると、そっとキッチンを覗き込む。そう、そっと。リヒトが真剣な顔で料理している姿を見るのが好きだ。でも・・・直ぐに見つかってしまうのだけど。
今日も、途中でリヒトの口元が緩んだ瞬間に、見つかった事を理解するのだ。本当に気配に聡い人である。
「どうしてそんな離れた場所で見てるの。目の前で僕を見ててよ。」
少しずつ慣れて来たとは言え、このそっと眺めるのは止められそうにない。だって、素敵なんだもん。と、思いつつ、リヒトの目の前のカウンターに座る。
「あ、お茶プリン美味しそうだね。そうだ、僕は珈琲ゼリー作ろうかな。莉亜は珈琲ゼリーはどう?」
「生クリームがあれば食べられるよ。」
「そっか。じゃあ、僕が作るね。」
リヒトは茶碗蒸しと、珈琲好きだ。珈琲味なら、ゼリーも好みなのだろう。熱い時にピッタリだしね。
「今日のお昼からは、あの書類を読むから。」
「分かったよ。」