第35章 農業生活 夏 二日目
目覚めれば、目の前にはリヒトの胸元。ピトッと顔を寄せる。心地いい心拍数が、やがて早くなる。見上げれば、蜂蜜色の瞳と視線が合わさった。
「おはよう、リヒト。」
「おはよう、莉亜。よく眠れた?」
「うん。もう、時間?もう少しだけこのまま引っ付いていてもいい?」
強請って見れば、リヒトは抱きしめてくれた。チュッと額に触れる、リヒトの唇。
「莉亜・・・唇が欲しいんだけど。」
見上げれば、視線が交わり、舌を絡ませてのルーティン。暫くの間、キスを堪能してから体を起こした。
「莉亜、もう少しだけハグさせて。」
抱き寄せられ、何度もキスされた。昨晩は、あのまま寝ちゃったから?熱い抱擁が、中々解かれなかった。
それでも、朝食の準備をしているリヒトをカウンターで眺めていると、ご機嫌な様子。嫌・・・欲求不満らしく、色気の籠った微笑みを時折向けられる。
こんな顔、他の誰にも見せたくないと思うのは、私の我儘だろうか?例えそうだとしても、見せたくなどない。
ハァっ・・・今日も安定にカッコイイ。毎日、惚れ直す。それに、料理しているリヒトを見ているのも好き。
「リヒト、好き。」
思わず零れてしまった声に、リヒトが私に視線を向けてハニかんでくれた。吐血しそうになった。テラスでの食事は、夏とは言えまだ朝は比較的過ごしやすい。リヒトの手料理を舌鼓しつつ、合間に唇も味見?
そして、食事後、リヒトにハグされたまま離れようとしない。嬉しいからそのまま私も大人しく抱かれている。
「リヒト、夕方くらいにお手伝いに行ってもいい?ほら、忙しいって言ってたでしょ?今日の加工は、そう手間じゃないから。」
「ありがとう。嬉しいよ。僕の傍に居てくれて。」
傍に居る事が名目じゃないんだけど、まぁいいか。リヒトが嬉しそうだし。
「そろそろ見回り行って来るね。」
「うん。気を付けて行くんだよ?」
いつも心配症だ。さて、水田へとGOだ。
「昨日より、更に茂ってる?」
うん、どう見ても緑色の濃さが違う。お米、いっぱい採れたらいいなぁ。今日も雑草を抜いて、肥料にする。
畑に行くと、出した芽が大きくなっていた。ここも、育ちがいい。朝夕の水撒き二回がいいのかもしれない。
さて、温室だ。今日はオクラの収穫。塩茹でして食べたい。籠にどっさりと収穫しては、キッチンへと持って行った。