第34章 農業生活 夏 一日目
夕飯はリヒトが作ったトマトソースたっぷりの、チキンソテー。夏野菜の付け合わせとコーンスープ。最後のお客さんを見送ってから、三人で食事。
「莉亜、何を作ってたの?」
「蕨餅と牛乳寒天だよ。」
ん?何か、リヒトはニコニコしているし、カミルは何となくソワソワしている。あぁ、食べたいんだね。蕨餅は兎も角、牛乳寒天が上手く固まっているといいなぁ。そして、あのトレイをリヒトが持って来てくれた。
そう言えば、あの大きなトレイを三つ分作った気がする。冷やす為に冷蔵庫に入れるのが大変だった。重くて・・・。
「あ、綺麗に固まってる。良かった~。いっぱい食べてね。」
初めての牛乳寒天作りは、成功だった。自画自賛だけど美味しかった。その後、カミルを見送って二人で入浴タイム。
「初日のお店はどうだった?」
「うん、順調だったよ。前より忙しかったかな。あぁ、暑いからかワインのソーダ割が想像以上に出たよ。」
何事も無くて本当に良かった。
「ここに来てくれるお客さんは、近隣の住人ばかりだから僕としても楽かな。まぁ、もう少ししたら観光客も来るかもしれないけど。」
「繁盛するといいね。」
入浴後、果実水を飲んで寝室へ行く。ベッドに寝転ぶ。
「疲れちゃった?作業場に行ったら、寝てたから驚いたよ。」
「加工品作りにのめり込んでたみたいでね。掻き混ぜるの大変だったから。」
隣りで横になっているリヒトが、額にキスする。
「もっと、僕の傍においで。」
体を寄せると、次は唇が重なった。
「少し残念だけど、今晩は止めておくよ。莉亜が疲れてるみたいだからね。明日も暑くなる様だから、このまま寝ようか。」
明かりを消すと、カーテン越しに月の光が輝く。穏やかで静かな時間の中、キスする水音だけが部屋に響く。
リヒトの体に擦り寄り、いつの間にか眠ってしまっていた私。最後に柔らかい感触が頬に触れ、甘い声が聞こえた気がした。
(愛してるよ、僕の莉亜。おやすみ。)