第29章 農業生活二十七日目
「ありがとう、リヒト。私も、一緒にいたい。」
「なるべく、僕の目の届くところにいてね?心配で心配で、何も手に付かなくなりそうだから。」
心配症で過保護で・・・溺愛が半端ないけれど、リヒトが執着する理由が分かるから反論なんしてしない。
お昼からは、二人でアイスクリームの作成。果実をゴロゴロと一緒に入れての、数種類のアイスを製作。そう言えば、バニラビーンズも、ここでは存在していたんだ。
あんなに甘い匂いなのに、味は苦いんだよね。きっと、何人も試食した人はいると思う。
「ねぇ、莉亜。今日は週末だね。昨日は生殺しだったけど、その分、今日は莉亜を可愛がってもいい?」
試食しようとしたアイスが、ボタッと机の上に落ちる。リヒトって、いつも確認してくる。もし、もしも、私が全力で拒否したら・・・リヒトは諦めるのだろか?なんて思ったけれど、下手に揉め事を起こしたくない。
「か、確認しなくていいのに・・・。」
「僕は莉亜の嫌がることはしたくない。嫌われたくないからね。それに、したくない時だってあると思うから。」
そんな、しょんぼりした顔しないで欲しい。何か、私の方が悪いことしている気分になってしまう。
「じ、じゃあ、もし、私が毎日だって言ったらリヒトはどうするの?リヒトだってそういう気分じゃない時があるでしょ?どちらか一方の意見だなんてダメだよ。」
「僕は・・・基本的に、毎日がいい。短い時間でもいいんだ。莉亜と触れ合う時間が欲しい。」
「それは私も・・・。」
リヒトが、ニッコリと笑う。
「じゃあ、遠慮しなくていいね。良かった。僕だけ一方的な気持ちじゃなくて。好きな人には、いつだって触れていたいよね?」
何か、地雷踏んだ気がするのは気のせいだろうか?
その日から、増々、リヒトの溺愛ぶりと、密着具合がかなりのものになっていた。夕飯もそこそこに、リヒトに抱き付かれて逃げられなかった。
昨晩が生殺しだったからと言っては、いつもより執拗に愛されたのは自業自得だと思っている。
・・・思っているんだけど、本当に容赦なかった。
次からは、絶対に気を付けようと思う。