第28章 農業生活二十六日目
うん、燃え尽きた朝。かなりご機嫌のリヒトと、精も痕も尽き果てた真逆の私。それでも、朝からリヒトと戯れる。戯れ・・・?
「今日も、一日頑張れるよ。ありがとう、莉亜。大好きだよ。」
「それは良かった。」
私はクタクタだけどね。まぁ、リヒトが嬉しそうだから許す。
「さぁ、今日はコーラルが来るから支度しないとね。はい、僕に掴まって?シャワー浴びに行こう。」
筋力が上がったリヒトに連れられ入浴タイム。あ~、体の痛みが薄れていく~。入浴後は、料理をしているリヒトを眺めていた。そう、目の保養。
無理させたから、そこで僕を見ててって言われてリヒトを観賞中だ。これもこれで、癒される。・・・あ?
「リヒト・・・その、左耳の下の・・・。」
「ん?左耳の下・・・?」
少し考える素振りをして、思い出したように笑顔になった。
「僕が莉亜のものだって言う証のキスマークだよ。昨日は、いっぱい付け合いっこしたからね。」
私のは、いつもの事だとまだ妥協できる。でも、リヒトに付けたのは・・・。よくよく見れば、鎖骨や首の後ろも・・・。昨晩の私自身を殴りたい。
「恥ずかしくて死ぬ・・・。」
「そうかな・・・僕は嬉しいよ?だから、隠すつもりもないから。」
部屋に走って行っては、スカーフを掴んで持って来たんだけど・・・あんまり、意味が無いことに気付いた。昨日の私に変なスイッチを入れたのは、リヒトが原因だと思う。
どこまでも、リヒトはケロッとして本当に全然気にしていない。どちらかと言うと、まだウエルカム的な笑顔だ。気を引き締めよう、うん。
でも、今日はもう・・・どうにも出来ない。気にしない。それしかない。コーラルがスルーしてくれることを祈ろう。
いつもの様に、ジルドには温い目で見られたけれど・・・地味に、精神がすり減った。朝食は、それでも美味しく頂いた。
さて、農作業の準備だ。高価な鎌、鍬、ハンマー、斧などが揃っているけれど、今日は鎌と鍬。
「莉亜、今日は何の種を蒔くのか決めてる?」
「あぁ、ラディッシュ。」
「・・・試食、頑張ったんだね。」
リヒトの視線から、そっと目を反らす。
「まぁ、分かってたけどね。」
「えっ、どうして?」
「キスしたら、ラディッシュの味が多々したからかな?」
開いた口が塞がらない。どうやら、バレていたらしい。