第24章 農業生活二十四日目 前編
えっ?っという顔をすると、慌て様子で「半分でも・・・。」と、更に謙虚な台詞が紡がれた。
「あ、と、突然ごめんね?この前お菓子まで貰ったのに。その・・・ローランがピリピリしてて。あの子、甘い物を食べると落ち着くから、その・・・お願い出来ないかなって思って。農家さんが大変な時なのは、分かってはいるの。でも、何とかお願い出来ないかしら?」
私はシノンさんを連れて、家の中へと戻り待っていて貰う。
「莉亜、大丈夫?」
心配して現れたリヒトに、事情を話すと呆れたように笑っていた。
「そういうところ、変わってないんだなぁ。」
そうか、昔からそういう人なんだ。ま、私に害があるわけじゃないからどうでもいいけど。
「ねぇ、本当に一枚でいいと思う?」
「一枚ずつはどう?」
「シノンさんも、甘党だものね。分かった。」
シノンの所に戻ると、リヒトが振舞ったらしい果実水を飲んでいた。
「お待たせしました。はい、板チョコ。一枚ずつ。」
「一枚ずつ?って、わ、私の分ってことかしら?」
遠慮しようとするシノンに、そのまま握らせた。
「あ、ありがとう!!」
「これで、大丈夫そうですか?」
「ええ、ダメだったら、体に分からせてあげるから大丈夫よ。」
ん?何か、物騒な言葉が聞こえた気がする。笑顔で帰って行くシノンを見送り、リヒトに聞いてみた。
「ひょっとして・・・シノンさんも強いの?」
「よくわかったね。」
リヒトも笑顔だった。何となくだけど、ローランより強者な気がする。あんな線の細いたおやかな人なのに不思議だ。因みに、この世界の板チョコは一般的な板チョコの2.5倍の大きさがある。
「でも、姉弟として仲はいいのね。」
「うん。何だかんだ言っても、ローランさんの目標って、シノンさんだから。僕がシノンさんとの接点はそうなかったんだけどね。街に修行に行っていた人だから。」
そっか、後を追ってローランさんも頑張って来て、やっと村に戻って来たんだね。兎に角、怒らせないようにしよう。
「リヒト、温室でアーモンド収穫してくる。直ぐに終わるから一人で大丈夫。そろそろお昼の準備があるでしょ?」
「分かった。無理しないでね。それと・・・試食は程々にね?」
「うん。リヒトの美味しいご飯、楽しみにしてるね。じゃあ、行って来る。」