第24章 農業生活二十四日目 前編
温かくていい匂い・・・擦り寄ってみれば、何かに撫でられる感触。心地よくて気持ちいい。って、息苦しさを感じて目を覚ました。
「あれ・・・もう起きちゃった?おはよう、莉亜。もう少し眠っててもいいんだよ?」
もう少し眠ったら、あの世からお迎えが来そうな気がする。リヒトを見れば、蜂蜜色の瞳に熱が籠っているように見受けられた。
「リヒト・・・。」
「うん?」
「苦しくならない程度に、お願いします。」
肯定も否定もせずに、ほのほのと微笑んでいる。この笑顔で押し切られるんだよなぁ・・・。
「お昼から、散歩に行かない?たまには、ゆっくりしようよ。」
「散歩か、いいね。でも・・・もう少しだけ。」
ギュッと抱き締められ、私の頭に顔を埋めるリヒト。それでも、数分後、腕が離れた。名残惜しいけれどジルドが来る時間帯。
「先に行ってるから。莉亜はゆっくりおいで。」
ルーティンの後、着替えて部屋を出て行った。さて、私も支度しよう。いつもリヒトに、ジルドの出迎えしてもらっているし。それに、改築状況も見ておきたい。
身支度してリヒトの所に行くと、ルドと話をしているリヒトがいた。
「そうですか。」
「本当に興味なしな物言いだな。」
「僕は莉亜さえ、穏やかに暮らすことが出来ればそれでいいんです。他に優先することなんてありませんから。」
何の話しをしているのだろう?
「リヒト?」
「あ、莉亜。うん、今日のワンピースも可愛いよ。」
ルドがいても、お構いなしだ。ルドも、苦笑いしている。
「おはようごさいます、ルドさん。」
「おはよう。相変わらずの溺愛ぶりだな。」
そうだね・・・否定は出来ない。抱き付かれて、スリスリされてるし。ルドは、そのままいなくなった。
「何の話をしていたの?」
「パルマの元カレ、ローランさんに喧嘩売ったみたいだよ。あの人に勝てるはずなんてないのに。チャレンジャーだよね。」
「ローランさんにって、理由は?」
リヒトは首をコテンと傾げただけだった。まるで、さぁ?って言っているようなジェスチャー。私に言いたくないことなのだろう。それでも、じぃっとリヒトを見ていると、諦めたように口を開いた。
「正直に言って理由までは知らない。ただ、ローランさんは格闘技の有段者だよ。」
正当の理由だった。そっか、そういう理由で強いのね。