第23章 農業生活二十三日目
リヒトが戻って来ては、一緒にジャム作り開始。定番の作り方なんだけど、私の手元をじっと見ている。正直、遣り辛い。相手は本職だから猶更だ。
でも、同じように作っても、リヒトが不味いわけじゃないのだけど、微妙に私の味と違うんだよね。何か、隣りで向上心満載のリヒトは、燃えているようだった。
「瓶詰して、どうするの?あ、出荷?」
「うん。作った時でいいからって、ケビンさんにね。従業員の人の食事に出しているみたいだよ。」
「僕のはカミルにでも送るよ。でも、莉亜が作ったジャム、僕も食べていい?しっかり味を覚えて練習するから。」
真面目でストイックだ。私も説明しようがないし、リヒトなりに頑張って欲しい。でも、リヒトの方も美味しいんだけどなぁ。前と同じく、お金を出して食べるなら私の方を選ぶって言うんだよね。
夕刻になり、ジルドが現れた。外の柵は終わり、家具の移動も完了した様だ。ジルドたちを見送り、私はリヒトと夕食の準備。
ジャムの試食からか、夕食は少し辛い物を食べたいとリクエストしたら・・・麻婆茄子を作ってくれた。と言っても、辛さは私好みに抑えてくれているのだろうけれど。
「美味しい~っ!!どうしよう、止まらない。」
「気に入ってくれたようで良かったよ。そうだ、後、三日で改築が終わるそうだよ。」
「じゃあ、お店はいつから始めるの?」
リヒトは、少し考え込んでいる。直ぐに始めるのだろか?
「夏・・・になってからにしようかな。準備もやりたいし、カミルに連絡しないといけないなぁ。」
「私に出来ることがあるなら、手伝うからね。」
「ありがとう。莉亜の手を煩わせる時があるかもしれないけど、よろしくね。」
そうか、リヒトのお店・・・後一週間で始められるんだ。良かった、本当に良かった。
「良かったね、リヒト。また、お店やれるよ。」
「莉亜・・・うん。ありがとう。」
その日のリヒトは、本当に嬉しそうだった。