第23章 農業生活二十三日目
「莉亜・・・莉亜?」
リヒトの声に起こされ、目を開けた私。何故か、リヒトにしがみついて眠っていたらしい。リヒトの自由を奪うかの如く張り付く私に、リヒトは満面の笑顔だった。
「ご、ごめんなさい・・・。」
「謝る必要なんて皆無だよ。あぁ、おはよう。」
触れるだけのルーティン。でも、ちょっと物足りなくて、ついリヒトの瞳を見詰めてしまった。いつもの綺麗な蜂蜜色が目の前にある。
「お、おはよう・・・。」
一先ず、挨拶を返すとリヒトの指先が、私の唇をなぞる。とびきり甘い眼差しを浮かべて。
「フフ、物欲しそうな目をしてる。嬉しいよ。」
リヒトの手が私の後頭部に回され、望んだ以上の甘いキスをしてくれた。少々、酸欠気味なのは許容範囲。許容・・・範囲?そう言えば、昨晩から生まれたままの姿だった。
「あ、あの・・・リヒト・・・朝だよ?」
「うん、知ってる。でも、僕はちょっと忙しいから。」
ん?忙しいって?そんなことを思っていると、首筋にチクッとした痛みが走る。続けて、もう一度。慌てて拒否しようとしたけれど、既に火が付いたらしいリヒトを拒み切るのは無理だった。
しっかり、朝から頂かれてしまった・・・。自業自得だから、仕方ない。うん、仕方ない。リヒトの腕の中は、一番落ち着ける場所だもの。
「そろそろ、支度しないとね。とっても残念だけど。シャワー一緒に浴びようね。」
抱きかかえられ入浴タイム。羞恥なんて捨ててしまった。身も心も満たされて、私も満足だもの。入浴後、私が部屋で身支度をしていると、下からジルドたちの声が聞こえてきた。
想像はしていたけれど、リヒトの執着の証と呼べるキスマークが、日に日に増えていく。全身のあちこちにだ。人に見られないように、スカーフを巻いて準備万端だ。
キッチンに行くと、いつものエプロン姿のリヒトが目に入る。さっきまで、肌を合わせていた・・・そんなことを想像して、私の羞恥心が凄い勢いで帰って来た。
壁の陰で、もじもじと今更ながらリヒトを眺めている私。
「ハァッ・・・カッコイイ。」
でも、次の瞬間、リヒトの開けたシャツから見える鎖骨にある赤い痣に唖然。ねぇ、ジルドたち・・・それに気付かないわけないよね?リヒトも、見せつけるかのようにしているような・・・。
いや、ように・・・ではなく、そうなんだろう。