第20章 農業生活二十日目 R18
作業場に行くと、さっきまでのリヒトでは無かった。ジルドに何を言われたんだろう?
「リヒト・・・改築の事で、何かあったの?」
「ん?改築の方は順調だよ。」
気になる言い方だ。じゃあ、他の事で何か気になることがある?
「何があったの?」
「僕の与り知らぬところで、勝手に揉めてる。」
「えっ?揉めてるの?」
意味が分からない。
「昨日の観光客同士で、僕のことで言い争っているんだって。莉亜のことを僕の妻だって言ったのに、どうして僕の取り合いで喧嘩になるんだろう?」
さっぱり、理解出来ないって顔で呆れている。私も理解出来ないよ。でも、それほどリヒトのこと気に入ったってこと?ションボリする私の頭を、リヒトが撫でる。
「僕は莉亜だけだから、何も問題ないよ。まぁ、火の粉が降り掛かって来たら、全力で払いのけるつもりだけど。」
「まだ、あの観光客の人たち、この村に滞在してるのかな?」
「さぁ、どうだろうね。」
淡泊な返答だ。本当に、どうでもいいのだろう。
「どうしたの?あんなに朝から愛し合ったのに、まだ足りなかったのかな。」
「えっ、あ、そういう事では・・・。」
「でも、下手に気持ちを隠されるより、ずっといいよ。」
いやいや、リヒトは私の機微に聡いです。隠し事なんて出来ると思えないし。でも、それでも気持ちは・・・。
「明日、また店の方に行こうね。莉亜とデートしたい。」
とびきりのスマイルに、私は頷いた。食事の後、いつもの畑の見回りをしていると、燻製機の出来上がりを知らせるブザーが聞こえてきた。
リヒトと共に燻製機へと行き、燻製されたソーセージを出してくれた。その中で一つだけ・・・私はそれを見て、目が手になった。
「あぁ、燻製されて始めより少ししぼんだかなぁ。」
えっ、これで?そんなにじっくりリヒトのを見た事はないけれど、目の前にある大きなソーセージがしぼんでいるって?
「仕方ないか。莉亜、今回はこれで我慢して貰えるかな。味はいいと思うんだけど。」
お皿に乗せられた大きなソーセージ。両手で顔を覆う私。
「顔が赤いようだけど、どうしたの?あ、僕のものと食べ比べしたいの?だったら・・・。」
私は急いでそのソーセージを受け取り、直ぐに齧りついた。その瞬間、肉汁がはじけ飛ぶ。ある意味、卑猥だ。でも・・・。
「ん、美味しいっ!!」