第19章 農業生活十九日目
朝から濃密なルーティンをしてから、少々精神的に削られながらも身支度をしてキッチンへと向かった。作業の経過を見たかったから、覗いたのだけど。
「仕事が早いなぁ・・・。」
カウンター15席のみ。シンプルだけど、リヒトは大金を得たいわけではないらしい。リヒトが好きに楽しくやれればいい。
そして、気になっていた家の裏側へと行った。あの部屋の足元を見てみれば、へこんだ地面。そう大きくない足跡があった。数からして、一人のもの。
リヒトのお店でも見た誰かの目。あの時は、何となくだけど違う人だと思っている。男の人ぽかったし。
でも、どっちにしても怖かった・・・。何が目的か分からないし、見回りしてくれるらしいけれど自己防衛も大事だと思う。
それに、この村の女の人は、気の強い人が多い様に思う。双子はいなくなったし、ルディもいなくなった。残ったのはパルマたち二人と、パルマの恋人。
隣り村には、まだゲームに出ていたキャラも幾人かいる。殆ど、接点なかったけれど。牧場をやっている人や花屋経営者、雑貨店などなど。
ん?何か、表の玄関が賑やか?玄関先へと回ってみれば、観光客っぽい二人組の女性とリヒトがいた。リヒトそっちのけで、何やら盛り上がっている。
誰だろう?そして、何の用事だろう?
「リヒト?」
声を掛ければ、女性二人の鋭い目が私に向けられる。ちょっとだけ怯む私の元に、リヒトが近付いてきて女性の方に振り返った。
「可愛いでしょう?僕の妻なんですよ。」
女性の目が点。そして、私も同じような反応。まぁ、もうちょっとでそうなるんだけど。
「奥さん?」
「ええ、僕が一目惚れして、頑張って口説落とした、愛して止まない大切な女性なんです。」
ねぇ、女性たちも砂糖吐いてるよ?私も角砂糖2個くらい分吐いたけど。嬉しいけど、恥ずかしい。
「何やら、賑やかだな。」
「ケビンさん、おはようございます。」
そして、今回はジルドらも一緒だった。
「客か?」
住人ではない相手に、皆が目を向ける。
「いえ、迷ってここに辿り着いたそうですよ。目的地はお教えしましたから、大丈夫だと思います。」
「ふ~ん、そうか。」
誰もが気のない返事。大きいルドがチラッと二人を見た時、一瞬怯んだ様で足早にいなくなったのは有難かった。
面倒なことになりそうだったし。