第17章 農業生活十七日目
リヒトの気遣いが素直に嬉しい。
「リヒト・・・好きだよ。」
「僕も莉亜が好きだ。夫婦になったら、少しは安心出来るかな。早く秋になればいいのに。」
うん、執着心満載だ。リヒトらしいけれど。
「ねぇ、明日も来るかな?」
「どうだろうね。雨も降るだろうし。仮に来たとしても、もうあの部屋には何もないから問題ないよ。」
物の見事に空き部屋だ。何も部屋には置かれていない。私の自室だった部屋も、荷物は全て二階へと移動されていた。代わりに、機織り機などの機材が下に下ろされている。
「何がしたいんだろう。」
「ハッキリと分かれば、対処の仕方もあるんだけど。今は様子見かな。だから、一人では行動しないでね。まぁ、させるつもりもないけど。」
「は、はい・・・。」
リヒトの笑顔の裏には、黒い何かが見える気がする。機嫌は損ねているのは間違いないと思う。そして、今の私を羽交い絞めしているリヒト。ベッタリ所の話しではない。
「リヒト、ちょっと苦しい。」
「ん?」
何か、笑顔が怖い。
「い、いえ、何でもないです。」
「冗談だよ。これで、どう?これ以上は離してあげられないけど。」
「うん、離さないでね?」
おずおずと口にすれば、額に触れるリヒトの唇の感触。
「勿論だよ。莉亜は僕のものなんだから。」
空気が甘い。砂糖吐きそう。
大好きなリヒトに包まれ、目を閉じる。たくさんキスしてから、穏やかに眠ることが出来た。
リヒトが傍にいれば、私は大丈夫。怖いけど、こうやってリヒトが守ってくれるから私は私でいられる。
明日・・・来ていたかどうか、顕著に分かるだろう。誰もいない、何もない部屋を覗いた時、その人が何を思い何をするかは分からないけれど。
でも、リヒトだけは失いたくない。リヒトは私をリヒトの全てだと言ってくれる。それは、私にも言えることだと思う。
もう、リヒトのいない毎日なんて考えられないし考えたくもない。
何も起こりませんように・・・。