第2章 農業生活二日目
籠を持ち上げようとすると、横からひょいっと持ち上げられた。華奢そうに見えるけど、やっぱり男性なんだなと思わされる。
採取分は所定の回収してくれる場所に置いて、後は家用に幾つか見繕って冷蔵庫行き。その後は、隣りの温室へと入った。
昨日の私の様に、辺りを見回しているリヒト。小さく、感嘆の声が上がっていた。この中のベースは果物。季節感無視。そして、これまた季節感無視の野菜たち。ハーブも揃っている。
リヒトは、一本の木を見ていた。
「どうかしましたか?」
「あ・・・うん。この木って、珈琲だよね?」
「そうですよ。まだ、使えませんけど。」
リヒトは、熱心に珈琲豆を見ていた。
「家にありますから、夜にでも飲みますか?」
「えっ?これ・・・ブルーマウンテンだよね?そんな高価なのいいの?えっ、いいの?」
いいの・・・って、二回言った。余程、好きなのかな?
「リヒトさんが、淹れてくれるなら。」
「勿論。夜が楽しみだよ。」
これじゃあ、作業場見せたらひっくり返りそうだなぁ・・・。機材半端ないし。財力に物を言わせて集めた数々が並んでいるから。
サクランボ、またまた採取。またつまみ食い。
「ねぇ・・・このサクランボ、一房1000円の?」
「えっ?」
そんなにするの?私、昨日食べたよ?何、一房1000円って。
「これって一粒が大きいのに、大味じゃなくて瑞々しい。それに、凄く甘いんだよね。」
「どうして、知っているんですか?」
「昨日、ケビンさんから分けて貰ったんだ。すっごく頼み込んで。」
あのケビンさんに、頼み込んだんだ・・・。ちょっと、泣きそうな顔が目に浮かぶ。確かに、この味は忘れられないけど・・・。ゲーム内の私、いい仕事してたんだなぁ。
「リヒトさん、口開けて下さい。」
「口?」
薄く開いた口に、無理矢理捻じ込んだサクランボ。
「んっ!!り、莉亜・・・。」
「どうですか?」
「美味しいよ、勿論。この甘さは、病みつきになる。」
そう言ったリヒトに、サクランボが入ったカゴを渡した。
「これで、何か作ってくれませんか?」
ペカーッ!!と、眩しい笑みを浮かべたリヒト。
「作るよ。楽しみだなぁ。何がいいかな。」
浮足立っているリヒトを横目に見つつ、次の木の元へと行く。