第18章 クリスマス
………。
たぶん黒尾さんは単純に寝る時間が遅かったってことを言ってるんだと思うけど
やっぱり鏡に映る自分が目に入って。
『………奈々?』
無言の私へ、黒尾さんからの呼びかけ。
「あ、スミマセン」
『忙しいなら切るよ?』
「や、違くて」
『ん?』
「………キスマーク、付いてるの。
知りませんでした」
『ん"?!?』
「あ、すみません。なんでもないです」
『いや、ゴメン。マジで』
「いや、いいんですけど」
『ほんとに?』
「はい。初めてだったし」
『え?』
「や。キスマーク。つけられたの。」
『ほんとに?』
「はい」
『うわ~~~。マジか。
てか今普通に駅に向かってるけど、俺かなり顔ヤバイかも』
「捕まらないように気を付けてください」
『そうします。あーーーー会いてーーーーー』
「………さっきまで会ってたじゃないですか」
そういう意味じゃないってことくらいわかるけど。
でも、黒尾さんの声と鏡の中の自分を見ると、私もまた
会いたくなっちゃう。
『会社じゃないとこで。
佐藤じゃなくって、奈々って呼べるとこ』
「黒尾さん、週末のご予定は?」
『夜はありません』
「じゃあまたお泊まり行ってもいいですか?」
『お待ちしてます』
それから仕事のこととか少し雑談をしていたら。
『てか付き合わせてゴメンな?駅着いた』
「いいえ。気を付けて帰ってください」
『また連絡する。じゃ』
「はーい。お疲れ様です」
ふぅ
危ない危ない。
つい、今から会いたいって言ってしまうとこだった。
言えばきっと、会っていたと思う。
1ヶ月前、まさかこんなことになるなんて思ってもみなかった。
なのにこの短期間で、
こんなにも黒尾さんにハマってしまって。
私は大丈夫なんだろうか………。