第16章 クリスマスイブ(夜)
「………いや、ゴメン」
「謝られる方がキツイんで大丈夫です。ハイ」
「いや、そうじゃなくって」
じゃあなんだって言うんですか。
「次は俺の話していい?」
「………どうぞ」
不貞腐れた私の声は低い。
「まず結論から言うと、触れたくないわけない。
で、ちょっとびびってた」
「………なんでですか?」
少しだけ顔を上げて
黒尾さんと目が合う。
「なんでって、好きすぎて。
初めて、触れるのが怖いって思ってしまった。
でもこんなこと思ったの初めてだから、ウン。
どうしたらいいのか、わからなかった」
「………よく、わかんないです」
「ウン。俺も」
もっとこっちにって。
布団に潜り込んでいた私の顔は、少しひんやりとした空気に触れて
唇が塞がれる。
軽いキスから、少しずつ、
だけど確実に。
それは、深いものへと変わっていって。
「奈々………」
黒尾さんに名前を呼ばれるたびに
触れられるたびに
そこからじわりと。
私の体温はどんどん上がって。
行為自体はもちろん初めてじゃない。
だけど、こんなにも相手を愛おしいと思うのは初めてで。
大切にしてもらえている
愛されてるっていう実感を
全身で感じて。
強く、
抱きしめられて
涙が出てきた。