第13章 12月(夜)
「……………っ。
歯、磨きに行こっか?」
え?
「………はい?」
よっこいしょって。
私の体を起こしてくれて
乱れてたっぽい髪を整えてくれて。
そして手を引かれて、洗面所へ。
「ハイ。歯磨き粉」
「ありがとうございます」
2人並んで歯を磨く。
鏡越しに黒尾さんと目が合った。
「くろおさんって、やっぱりおおひいですね。何センチ、あるんでふか?」
「んー?188とか?」
うがいをして。
「へえー!改めて数字として聞くとすごいですね!」
「バレーしてる時は、役に立ったかな?」
「黒尾さんがバレーしてるとこ、見てみたいです!」
「最近はなかなか行けてないからな~。けど行く時は誘うよ」
「はい!楽しみにしてます!」
時計を見ると、あっという間に深夜2時。
「ふぁーーー!そろそろ寝るか」
さっきはふわふわとした気持ちになって、雰囲気?
流れっていうか、あんなこと思ったけど。
一度また冷静になると、どうすればいいのかわからない。
「ダイジョウブ。変なことしないから(笑)」
いえ、それはされていいんですけど。
「かーお!(笑)」
そう言いながらほっぺをむにってされる。
「え?」
「表情こわばってる。一緒に寝るの、イヤ?」
無意識。
そんな顔してたのか。
申し訳ない。
「イヤ、じゃないです」
なんだかもじもじとしてしまっている自分が、ものすごく恥ずかしい。
「ほら、おいで?」
手を引かれて、寝室へ。
「あ、なんかいいにおい。香水、ですか?」
「そう。いや、違うんだけど(笑)」
「ん?」
「香水と同じブランドの、ルームフレグランス?っていうの?
香水買い行った時に勧められてそのまま(笑)」
「へぇ~。ほんと、いい香りですね」
「そう?よかった。
あんまり広くなくて申し訳ないんだけど。おいで?」