第13章 12月(夜)
「なんか9年も一緒にいると、もう恋心なんてなかったんですよね(笑)
ただ、それ以上に一緒に過ごした時間を手放すことには勇気がいって。
で、別に嫌いじゃないし、もう今更だし。
だから普通に結婚するんだろうな~って思ってたんです。
で、あんなに辛かったのは、今更どうやって一人で生きていけばいいのかわからなかったから。
あとは、やっぱり裏切られたショックですかね?
まぁ他にもいろいろありますけど。
だけど、いろんなことを紐解いていくと、たぶん。
"すごく好きで好きでしょうがなかったから" ではなかったんですよね。
だけど、今黒尾さんと一緒にいると、なんかこう。
恥ずかしさとか、胸が苦しくなったりする感じとか。
高校生の時とはまた違う、今の私は知らない感情がいっぱいで。
黒尾さんが好きだっていってくれることも嬉しいし、黒尾さんのことを好きになれたことが、今すごく嬉しいです。
ほんとにありがとうございます」
ありがとうと伝えて隣の黒尾さんを見ると
すごく、優しい顔。
「俺の知ってる、会社の佐藤とは違うな~。
俺しか知らない、奈々なんだな」