第12章 12月(晩酌)
そして
『会いたい』と言われて。
先週デートはできたけど、そもそも今週会社にいる時間が少なかったし
会社にいても夕方からは出なきゃいけないから、いつも以上に仕事をこなすことに集中して。
帰った後ですら、なかなかゆっくり話す時間もなかったから
佐藤との時間なんてほぼ皆無。
そんな中でそんなこと言われたら
会う以外の選択肢なんて見当たらない。
だから、今からうち来る?って聞いてみたけど。
あの "間"
やらかしたって一瞬で後悔したけど
そうじゃなかったらしくって。
そして意外と、というか本当に意外に。
佐藤って気持ちを素直に言葉に出してくれるんだなって。
関心、って言うと仕事っぽいな。
うーん。
とにかく、いい意味で裏切られた感じ。
そんなことを考えていると、カチャリと浴室のドアが開く音が聞こえて
たまらず冷蔵庫から水を取り出して
一口、二口。
しばらくするとドライヤーの音が聞こえてきて
今まで自分しかいなかった空間に
誰か別の人間がいることを改めて認識する。
それが、他でもない佐藤
だからなぁ~~~。
うーーーーーーん。
とりあえず俺のドライヤー時間とは全然違う。
長い髪を乾かすのは、時間がかかるなって。
とりあえず気を紛らわせるためにスマホを触る。
仕事のメールは、明日でいいや。
佐藤来てなかったら、寝てただろうし。
「お風呂ありがとうございました~………」
「いーえ。どういたしまして」
「ていうか」
「ん?」
声だけでなかなか洗面所から出てこない佐藤。
「いや、当たり前なんですけど。
スッピン、なんですよねぇ………」
「いいじゃん。そんな変わらないでしょ」
「いや、変わります」
スパン!と返事が返ってきて、なんだか可笑しかった。
「とりあえずおいで?」
「………。」