第12章 12月(晩酌)
湯冷めしないように念入りに髪を乾かして
スウェットとダウンを着込み、そしてマフラーと手袋もはめて。
深夜近い時間、いつもの道をギアを上げて
この時間帯としては逆走する。
そして駅で佐藤と会った後は、駅横の駐輪場にチャリを置いて
佐藤に持って帰らないんですか?って言われたけど、チャリがあると手ぇ繋げないじゃん?
なんて言葉にするのはなんだか気恥ずかしくて言えなかったけど。
だけど無事に手を繋ぎながらドンキ経由で帰宅して。
で、今。
かすかに聞こえるシャワー音に、自分家なのに他所の家にいるみたいな。
………こんなにソワソワしてしまう俺は高校生か!
って一人で突っ込んでまうほど
さっきまで今日の予定に入っていなかった突然の出来事に、ソワソワしてしまって仕方がない。
今日の忘年会は上手い具合に一次会で帰宅できた。
今週は平日なのに朝まで付き合わされたクライアントもあって
正直しんどかったから、帰れたことにかなりホッとした。
ただ、今帰ったよって佐藤に連絡をしても、なかなか返事はない。
最悪まだ会社だよな~って、先に帰ってきてしまったことに罪悪感。
ただ、今から会社に行っても、終電を考えると効率が悪いことはわかるから
とりあえず明日は出社するって決めてシャワーを浴びて。
部屋に戻ると着信中。
相手は佐藤で、口元が緩む。
出てみるとご機嫌な感じで
原田と飯食いに行けたみたいで、少しホッとした。