第11章 12月(はじめての)
「てか佐藤、手袋とかしないの?」
はっと気づいたような黒尾さんは、自分の左手の手袋を外して。
「よければこれはめてて?
待たせてる間にも冷えさせたよな?まじでゴメンな?」
心配そうにしてくれる黒尾さんだったのに、手袋をしていない自分が申し訳ない。
「ありがとうございます。
いや、実は去年の終わりに手袋片方なくしちゃって。
春先だったし、もういいかな~って思ってたら今年手袋ないこと忘れちゃってて。
で、なんか思い出した時だけ今年どれにしよう~って探してたんですけど、なんかあっという間に12月になってました」
説明しながら自分で呆れた。
「え、このクソ寒いのに手袋なしでチャリ乗ってんの?」
こんなに寒いのに手袋がないことに気づくのは通勤時だけだから
いざショッピング!という時には思い出せない。
そもそも今年は色々とありすぎて、ショッピングどころではなかった感もある。
そして言い訳が息を吐くように出てくる自分に、さらに呆れる。
「そういうことになりますね?」
「はぁ?信じらんねぇ。今でもこんなに冷たいのに」
繋いだ大きな手で、ギュッと包み込むように覆われて
ふふふ。
手袋買いそこなってラッキー!なんて。
「今年は黒尾さんに暖めてもらおっかな!」
なーんて。冗談で言うと。
「お前なぁ~~」
隣の黒尾さんは顔を逸らして反対を向いてるけど
耳まで赤くなっていて、思わず私まで赤くなる。
「あんまりオジサンをからかわないで下サイ」
「気をつけまーす」
「いや、もっと言ってくれてもいいんだけど。
でも外だとちょっとね……。はぁ」
私の言葉でこんな風になっちゃう黒尾さんに、なんだか嬉しくなっちゃう。
角を曲がると、ドンキ発見。
「あ。ドンキ寄っていいですか?」
「ウン。そのつもり」
ドンキではメイク落としから化粧水やら歯ブラシやら、下着を選ぶ時はさすがに待ってもらった。
あとはお酒とおつまみも少々。