第11章 12月(はじめての)
「もちろん!その時はついてきて下さい!」
「んじゃそういう気持ちになったら早めに教えて。勉強しとくから」
ニカッて笑う黒尾さんにつられて、私も笑顔になる。
駅横の駐輪場に停める黒尾さんを待って。
「ゴメンなー。てか寒くない?大丈夫?」
「大丈夫です」
「そう?でもよかったらコレ使って」
そう言いながら黒尾さんの首に巻いていたマフラーが、私の首にグルグルと巻きなおされる。
ふわりと黒尾さんの香りに包まれる。
「ん?どうかした?」
顔が緩んでしまっていたのかな。
恥ずかしい……。
「あ、いや。黒尾さんの香りがするなって思って」
「え、くさかった?」
「いや!そうじゃなくて!
黒尾さんって、香水とか、つけてるんですか?」
「あ、うん。香水キライ?」
「ううん。実は付き合ったりする前から、黒尾さんっていつもいい香りだなって思ってました」
「ほんと?ならよかった。
俺もこの香り気に入ってるから、そう言ってもらえると嬉しいわ」
そして、香水と一緒にほんのりタバコの匂い。
タバコは苦手。
だけど、それも黒尾さんのって思うと嫌じゃない。
むしろ香水と混じって愛おしさが増す。
「えへへ」
「じゃ、行きましょうか?」
そう言って差し出された左手に、まだまだドキドキして。
一瞬躊躇う私に。
「俺のわがまま。手、繋いで?」
少し覗き込むように言ってきた黒尾さんに、またドキドキして。
彼氏と手を繋ぐというのも何年ぶり?で
黒尾さんといると、ドキドキが止まらない。