第11章 12月(はじめての)
『佐藤?どうかした?』
「あ、いえ。ちょっとだけ、黒尾さんに会いたいな~って思っちゃっただけです」
『……何?どうしたの?なんか積極的じゃないデスか?』
「……お酒飲んだからですかね?」
ウン。たぶんそう。
私って黒尾さんにこんなこと言えるんだ~。
『………明日予定は?』
「仕事しに行かなきゃな~って感じです。行きたくないけど」
『うーん………』
なにか悩んでる黒尾さん。
『今から、うち来る?』
突然の、そして予想外のお誘い。
「………。」
思わず考え込む。
『ゴメン、冗談。駅までまだかかる?』
「冗談、なんですか?」
『え?』
「会いたいです。けどなにも準備してないから……」
なんだか言いながら恥ずかしくなってきた。
『近くにドンキ、ありますけど?』
「………知ってます?ドンキって、だいたい何でも揃うんです」
『最寄り駅まで来れる?』
「はい」
『じゃあ電車乗ったら連絡して。駅まで行くから』
「………よろしくお願いします」
じゃあ。と言って、とりあえず通話を切るけど。
………………。
今私、とんでもないこと言わなかった?
今から会いたいって。
え?
時計を見るとぼちぼち終電の時間帯。
今から会いたいって"ソノつもり"だよね?
さっきさおりに言われて、無意識に意識してしまっていたのか。
てかドンキは何でも揃うって、私なに言った?
とりあえず、正気に戻って
ひとりで頭を抱えた。