第10章 12月
今日もあっという間に21時前。
朝9時から始業だから、12時間後の21時がいつの間にか目安になっていた。
今日も隣にはさおりがいる。
「ねぇ、さおり~。今日何時までやる?」
「終電までやれるとこまでやるか、今日は帰って明日午後からでも来るか……。
金曜になんでこんな時間まで仕事してるかほんと意味わかんない!」
「そっか~。私もう帰ろうかな~」
月曜日から金曜日まで、さすがに疲れた。
目がしぱしぱする。
「この後予定あるの?」
「いや、ないけど」
「え、じゃあご飯食べて帰れる?」
「いいけど。さおり大丈夫なの?」
さおりはいつもワンピースだし
ほわんとした女子になりたいらしいし
早く寿退社したい!が口癖だけど、実は同期で一番仕事ができる。
人は見かけで判断してはいけない。
いや、してはないんだけど。
だけどバリキャリだって見られたくないらしく、あえてそういう風に装うらしい。
基本的に賢いし、一緒に仕事をしない限り
バリキャリだって本当に思わせないからすごい。
だから、同期で一人だけクライアントを丸っと任されていて、私よりやらなきゃいけないことは多いはず。
「もうどうせ終電までやっても終わんないしー。明日やるーーーー」
「……じゃあ私も明日来ようかな~」
「まじ?じゃああとちょっとしたら帰ろう!
オジサンと飲むのいい加減飽きたし!なんか美味しいもの食べて帰ろ!ねぇ、何食べる~?!」
「お肉!」
「オッケー!この前行ったところ美味しかったからそこでいい?」
「もう美味しければなんでもいいよ」
「ちょっと席空いてるか電話してくる!」
そうと決まれば!ってスマホを持ってフロアから出て行くさおりを見送る。