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【ハイキュー】思い出すのは、いつも【黒尾鉄朗】

第8章 海で


暗くてよかった。


身体は寒さを感じているのに、顔が熱い。





「だってパワハラになったら大変だから」



「今も、上司と部下、なんですか?」



「………ゴメン。違ったね」





黒尾さんの頬を支えていた大きな左手が、ゆっくりと私の方に伸びてきて


私の右頬に触れる。





「黒尾さんの手、冷たい」



「ゴメンね?でも我慢して」



「了解です」



「今は、違うでしょ?」



「……はい」





ゆっくりと目を閉じて。

唇に温かいものが触れる。



そこからじわりと、また愛しさが溢れた。




私が苦手なコーヒーの香り。

だけど不思議とイヤではなかった。





唇が離れてゆっくりと目を開けると、黒尾さんと目があって

思わず伏せてしまう。



私の頬にあった手で、今度は優しく頭をなでられる。





「どうしよう。幸せすぎて泣けてくるわ」



「……泣かないで下さい」



「ハイ。我慢します。代わりに」





今度は抱きしめられる。




ふわりと。




黒尾さんの香りに包まれた。





今まで仕事で見てきた大きな背中に、そっと手を伸ばす。





「黒尾さん?」



「ん?」



「よろしくお願いします」



「うん。こちらこそ」





さっき黒尾さんに泣かないでって言ったけど

幸せな気持ちで溢れる涙は止められなくて。


黒尾さんの胸のなかで、こっそりと泣いた。
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