• テキストサイズ

【ハイキュー】思い出すのは、いつも【黒尾鉄朗】

第7章 海へ


黒尾さんが運転する車は、空っぽの駐車場に静かに止まった。





「………どうする?」



「………あ」



「外、寒そうだけど。降りる?」



「……はい」





涙はずっと前に止まっていたけど、上手く声が出せなかった。



黒尾さんがエンジンを切って車を降りると、少し離れた駐車場でも、かすかに波の音が聞こえた。





「運転、ありがとうございました」



「俺、運転するの好きだから」





そう言って優しく笑う黒尾さんに、また泣きそうになった。





「やっぱり12月はさみーな。大丈夫?」





持ってきたストールをグルグルと巻いて。





「大丈夫です。黒尾さんこそ、寒くないですか?」



「俺は大丈夫。あ、カイロがわりに飲み物買おう」





駐車場の隅にある自販機に向かう後をついていく。





「何がいい?」



「あ、じゃあミルクティで……」



「りょーかい」





買ってもらったミルクティを両手に包んで、海に向かう黒尾さんの後をついていく。





「どうする?歩く?座る?」



「少し、歩きたいです」



「うん」





ただ黙って


私の横で私に合わせて歩いてくれる。






手の中のミルクティが温かくて。




波の音に感情を揺さぶられて。




また涙が溢れそうなのを我慢して。





ただ、歩いた。
/ 355ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp