• テキストサイズ

【ハイキュー】思い出すのは、いつも【黒尾鉄朗】

第6章 海(の前)


「ごめん、入っていい?」





小さくうなずく佐藤を確認して、鍵とチェーンをかけ直して。

肩を震わせながら前を歩く佐藤についていった。





「よかったら、座ってください……」



「ん。ありがと」





促されるままソファに腰をかけて。

佐藤はラグの上に半分崩れるように座った。





どれくらい時間が過ぎたんだろう。


そう思って時計を見たけど、まだ5分も経っていなくて。



だけど我慢しようとしても止められないんだろう

涙を流す佐藤が目の前にいるのに、何もできない時間は

果てしなく長く感じた。





「今日、ほんとに、すみません……」





今日何度目かわからない、佐藤の「すみません」。





「んーん。謝る必要なんてないよ。よかったらコレ。飲んで?」





そう言ってさっき買ったお茶を差し出す。





「………ありがとう、ございます」





俺が渡したお茶を少しだけ口に含んだのを確認して。





「言いたくなかったから、話さなくていい。だけど聞くね。


………何があった?」





俺の質問に返事はなくて。


ただ、テーブルの上に置いてあったスマホを手に取りさわる佐藤をただただ待った。



そして、俺の方にスマホを差し出してきたから

その画面を覗くと。





婚姻届に指輪が並んだ写真。





………そういうことか。





「嫌なもの、また見せてごめん」





そう言う俺に対して顔は下を向いたまま、ふるふると首を横に振る姿が痛ましかった。





「私が、いけないんです。

なんで、ブロック。してなかったんだろう………」





たぶん俺がいるから。

泣くのを我慢している。





「泣きたいなら、泣いていいよ」





やっぱりただ首を横に振る佐藤に

俺がこんなに苦しいんだから、本人はどれだけ苦しいんだろうか。


俺なんかには到底想像もできない。
/ 355ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp