第6章 海(の前)
『〇〇マンション、です……』
「ちょっと待ってな………」
急いで検索する。
近くにパーキングも、ある。
通話をスピーカーに切り替えて。
「今から向かうから」
『…すみませ……』
「謝らない。
ごめんな。もう少し待って」
通話はそのままで、とにかく急いで車を走らせる。
近くのパーキングに駐めて、さっき買ったコンビニの袋を持って走った。
「今近くに車駐めた。部屋番号、何号室?」
『502……です』
「わかった」
玄関ホールに入り、部屋番号を押してインターホンを鳴らす。
無言だったけど、オートロックが解除されて、エレベーターの上りボタンを押した。
エレベーターが降りてくるまでたった数秒なのに、それすらも長く感じて
何度もボタンを連打してしまった。
通話はずっと繋がっていたけど………
何に対して泣いているのかもまだわからなかったから、声の掛け方がわからなかった。
部屋番号を確認して、インターホンを鳴らす。
「佐藤………?」
ずっと繋がっていた電話越しに呼びかけて。
ドアを開けてくれるのを待っていると、ガチャガチャっという音がして。
「ほんとに、すみま、せん……」
やっぱり佐藤は涙でぐしょぐしょに濡れた顔を下げていて、絞り出すような声が小さく聞こえた。