第77章 不知夜月
黒尾さんはまだ仕事中だから
先にご飯の支度をする。
黒尾さん、たぶんまだ帰ってこないし
野菜を切って圧力鍋へ。
まだ週末はじまり
今日はちょっと疲れたから
あとは全部圧力鍋に任せる。
洗濯物を畳んでいると
「お疲れ様です!」
『お疲れ~。今から帰る』
思ってたより早かった黒尾さんからの電話。
「もう会社出ました?」
『ウン。今出たとこ』
「月!見えます?」
『んー?どっちだ?』
「東!」
『がどっち………。
あ、こっちか。けど見えねぇな』
「そっかぁ」
『なに?今日もいい月だった?(笑)』
「はい!昨日より凄かったです!」
『へぇ。じゃあちょっとそっちの方意識してみるわ』
「そうしてください!
あ!私駅までお迎えに行きますね!」
『え?!なんで?!
迎えっつってもチャリだろ?(笑)
危ないから家にいなさい?』
「はい。そうですけど。
黒尾さんと一緒に今日の月見たくて。
危ないって、終電で帰る日考えたらまだ全然ですよ?」
『そう言われたらそうだし、
ソレ言われちゃうとなぁ』
「電車乗ったら教えてください!」
『ぜってー余所見するなよ?!』
「了解でーす!」
切る間際に
大丈夫かよ……って
呆れた声が聞こえた。
今日は大丈夫ですよ。
たぶん。